20章 中学の試練

夜……、ミズカはエーフィと散歩した。拓けたところを見つけて立ち止まる。満月が神々しく輝いていた。

「エーフィ。あたし、カスミを怒らしちゃった」
「フィ?」

月を見ながら、いきなりそんな事を言うミズカにエーフィは首を傾げた。

「あたしが悪い。カスミに相談しないから……。カスミは心配だからあたしに聞いてくるってことわかってるんだ。でも、言ったら余計、カスミは心配するのもわかってる」
「フィ……」
「どうしたら……いいかな……。あたし、こういうの苦手だし……」

エーフィの頭を撫でて無理矢理笑おうとしたが、それは出来なかった。最近平気でつくれる笑顔。だが、親友とまでギスギスとした関係になるのはミズカが耐えられなかった。目に涙が溢れてくる。カスミと喧嘩なんてするつもりなんてなかった。

エーフィはそんなミズカを見て、心配する。自分は彼女のそばにいることしかできない。ミズカの辛さは十分に伝わってくるのに、何もできない。

「行こう。みんな心配しちゃうし……」
「フィフィ……」

エーフィの心配した表情を見てやっと笑顔を見せられた。それに、散歩をしてしばらく経っているはずだ。そろそろ戻らないとまずい。エーフィはミズカの足に擦り寄った。ミズカはしゃがんでエーフィを抱き締める。

「平気……嫌なことなんかすぐ終わるよ。きっと……」

これは悪夢。すぐ終わる。そんな願いは戯言だとわかっていたが、ミズカは必死に自分に言い聞かせて、みんなの元へ戻った。

「ミズカ! あんたどこ行ってたのよ!」

帰るなり、怒鳴ってきたのはカスミだ。目の前にいたのは、いつものカスミ。気まずさがもうないミズカは拍子抜けした。そして首を傾げる。

「言ったじゃん……。散歩だっ――」
「散歩で2時間も3時間もかかるの? まったく、あんた今は夜なのよ!」

何も言わなかったのに、話さなかったのに、彼女はいつも通りに接してくれる。それに救われる。
10/19ページ
スキ