20章 中学の試練

「なんで?」
「いいから」

ミズカは首を傾げながら、座った。

「正直に答えなさいよ?」

ゆっくりとカスミはミズカの目を見ていった。ミズカは軽く頷いた。

「辛いこと……あった?」

ミズカは思わず言葉が詰まった。カスミは気づいている。そう思うと言ってしまおうかどうしようか迷ってしまった。

「あんたの寝言ね。聞いちゃったのよ」
「寝言?」
「なんで? あたし、どうしたらいいの……とか。みんなも気づいて……とか」

カスミに言われ、ミズカは顔を歪ませた。自然にそうなったのだ。

「それに……。辛い……辛いよって、あんた泣いてたのよ? 言ってくれなきゃ、わからないじゃない……」
「カスミ……」

カスミの優しさが嬉しかった。しかし、言いたくない。心配を掛けたくない。その気持ちだけは変わらなかった。ミズカは戸惑いを見せる。

「言いなさいよ。辛いんでしょ?」

ミズカはしばらく考える。カスミには言ったほうが、かえって良いかもしれない。しかし……。沈黙が続く。カスミはミズカの言葉を待った。

沈黙を破ったのは、ミズカでも、カスミでもなかった。

「ミズカ、カスミ。タケシがもう行くってさ!」

サトシだった。

「わかった! それじゃ準備するね」

ミズカは逃げるようにその場を去った。カスミもその場にゆっくりと立ち上がると、荷物が置いてある所へ歩いて行った。2人の間に少しの気まずさが生まれた。

「ミズカとカスミ……、また喧嘩でもしたの?」

再び旅路を行くと、ハルカが2人の顔を覗いた。

「喧嘩? してないけど……?」

カスミをチラッと見て答えた。カスミはあまりミズカとは顔を合わせたくないのか、そっぽを向く。

「そう? さっきと雰囲気違うから……喧嘩したのかと思ったかも!」
「たしかに、さっきから会話してないよね」

ハルカの言葉に同感だったらしくマサトも言った。ミズカは苦笑する。ミズカはカスミが怒ってしまったように感じる。
そう思うと、先程、逃げてしまった自分を後ろめたくなった。

――でも……、言っちゃうと余計……心配するよね?

またチラッとカスミを見た。そしてため息をつく。ミズカは、複雑な思いで悩んでいた。

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