20章 中学の試練

「ねぇ。あんた何か悩んでない?」

カスミは結局我慢ならなかった。図星を突かれたミズカは、一瞬おにぎりを喉に詰まらせそうになった。なんとか飲み込んで、顔をしかめる。

「何もないよ。カスミ、何かさっきからそればっかじゃん」
「それは、あんたが心配で――」
「平気平気。ご心配なく! あたしはもとの世界でバリバリ元気にやってるから!」

カスミの言葉を遮り、誤魔化すためにまた笑顔になる。ご丁寧に力瘤まで見せた。もしかしたら、今のはチャンスだったのかもしれない。だが、無視されているなんていうのは、ずっと勇気がいった。心配を掛けたくない。なかなか来られなくても自分は元気でやっていると思ってもらいたかった。

昼食後、ミズカは木の下で涼んでいた。

「ミズカ……。ミズカ?」

カスミが何度呼んでもミズカから返事は返ってこない。スヤスヤ寝ている。カスミはため息をついた。やはり、ミズカは悩み等ないのかもしれない。そう思えてきた。

今まで、悩みがあるとき自分が首を突っ込むと必ずムキになって否定していた。しかし、今回はただ笑うばかりでムキにならない。

自分の気にし過ぎ。そう思いながら、ミズカに声をかけようとする。

「……んで?」

ミズカの寝言にカスミの口を噤んだ。聞き取れなかったが、なんとなく、大切なことのような気がする。カスミはミズカを起こすのをやめて隣に座る。

「なんで? あたし……どうしたらいいの……」

聞こえてくる寝言にカスミは耳を傾ける。やはり悩みがあるということを悟った。

「みんな……気づいて……」
「ミズカ……?」

カスミは驚いた表情でミズカを見た。ミズカの目からは涙が流れている。

「辛い……。辛いよ……」

震えた声で涙を流し訴えるミズカ。その声にカスミの胸も締め付けられる。カスミは見ていられなかった。

「ミズカ! 起きなさいよ!」

ミズカを起こした。ミズカは目を擦りながら起きる。

「あ~なんか寝てたみたいだね。ごめん、すぐ……」

少し焦ったようにミズカは立ち上がった。きっと涙に気づいたのだろう。そして、サトシ達のところへ行こうとする。

「ミズカ……ちょっといい?」

カスミに呼び止められた。ミズカは欠伸で涙が出たことにしたいらしく、大きく口を開けながら、涙を拭った。そして、振り返ると、顔をしかめる。
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