20章 中学の試練
「それじゃ博士、3匹をよろしくお願いします」
「まぁ、お前さんのポケモンは皆、良い子じゃからのう、心配ないじゃろ」
「ありがとうございます」
ミズカは、チルタリスの上に乗った。ポケモンの力を借りたほうが早くサトシ達に会えるはずだ。
「行ってきます!」
マサラタウンに別れを告げて、ミズカは旅立つ。
「あっ、いたいた」
チルタリスでの移動でやはり正解だった。朝から旅立って、昼にはサトシ達を見つけられた。サトシにハルカにマサトにタケシ……、そして、親友のカスミが目に入る。
カスミもいることは、ケンジからすでに聞いていた。
「おーい!」
大きい声でサトシ達を呼ぶ。サトシ達はそれに気づき、上を見上げた。
「ミズカ!?」
5人は、驚いた表情でチルタリスに乗っているミズカを見た。ミズカは5人の前にチルタリスで降り立つ。
「なんで、そんな驚いてるの?」
と、まだ驚いている5人に言いながら、チルタリスから降りる。そして、チルタリスの頬を撫でながらお礼を言うと、モンスターボールに戻した。
「驚くも何も、ミズカその髪……」
ハルカが言った。ミズカは自分の髪を触る。5人はまだ、ミズカがショートヘアになった事を知らない。
「何? 失恋でもしたわけ?」
カスミがミズカの頭を指しながら聞く。ミズカは思ってもみなかった質問に顔をしかめた。
「違うよ! 部活で髪を切ろって言われたの!」
「部活って、もとの世界のか?」
タケシが聞くとミズカは頷いた。
「へぇ~、切らされるんだ~」
「なんかすごいな」
マサトとサトシは感心した様子である。そもそも、この世界には部活は馴染みのないものだ。学校単位のクラブチームのようなものだと説明を受けたからわかるが、その実態までは具体的にはわからない。
「で、その部活はどうなのよ」
「えっ」
カスミに聞かれ詰まってしまった。嫌な事を思い出す。
「あー、厳しいんだよね~。もう大変!」
ミズカは苦笑して、頭を搔いた。本当は、別に厳しい事などどうでも良いのだが。
「部活の同級生とも仲良くやってるの?」
鋭いな、とミズカは思った。悲しいことや辛いことがあるといつもカスミはいち早く自分の異変に気づく。しかし、今は仲間たちと再会し、楽しい時間を過ごす予定なのだ。急に相談することもしたくない。
「もちろん! だって5人しかいないんだもん」
だからミズカは明るく笑って見せた。
「……そう」
カスミはそれ以上、何も問わなかった。が、少し変には思う。自分の好きなことをしているのなら、ミズカが最初に出る言葉は「楽しい」のはずだ。楽しいという言葉は、今のところない。
ミズカはカスミから目を逸らす。本当は無視されて虐められている。楽しいなんて思っていない。カスミは4人と楽しそうに話している。
ミズカは、せっかくポケモン世界に来られたのに楽しめそうになかった。
「ミズカ、どうしたんだよ」
サトシに言われて我に返った。ミズカは、軽く首を横に振る。
「なんでもない!」
元気よく見せながら答える。しかし、もとの世界の事を忘れるためにこの世界へ来たのに、どうしても頭から離れなかった。楽しそうな5人が、今は遠くに感じる。
「お姉ちゃん、本人に聞いた方が早いんじゃないの?」
「そうかも!」
「……ねぇ、ミズカって、カスミがいるから、狙って来たの?」
「え?」
マサトに聞かれ、ミズカは聞き返した。気づけば森の中を歩いている。全く話を聞いていなかった上に、上の空だった。
「もしかして聞いてなかったわけ?」
カスミは顔をしかめ、ミズカの顔を覗いた。
「まぁ、お前さんのポケモンは皆、良い子じゃからのう、心配ないじゃろ」
「ありがとうございます」
ミズカは、チルタリスの上に乗った。ポケモンの力を借りたほうが早くサトシ達に会えるはずだ。
「行ってきます!」
マサラタウンに別れを告げて、ミズカは旅立つ。
「あっ、いたいた」
チルタリスでの移動でやはり正解だった。朝から旅立って、昼にはサトシ達を見つけられた。サトシにハルカにマサトにタケシ……、そして、親友のカスミが目に入る。
カスミもいることは、ケンジからすでに聞いていた。
「おーい!」
大きい声でサトシ達を呼ぶ。サトシ達はそれに気づき、上を見上げた。
「ミズカ!?」
5人は、驚いた表情でチルタリスに乗っているミズカを見た。ミズカは5人の前にチルタリスで降り立つ。
「なんで、そんな驚いてるの?」
と、まだ驚いている5人に言いながら、チルタリスから降りる。そして、チルタリスの頬を撫でながらお礼を言うと、モンスターボールに戻した。
「驚くも何も、ミズカその髪……」
ハルカが言った。ミズカは自分の髪を触る。5人はまだ、ミズカがショートヘアになった事を知らない。
「何? 失恋でもしたわけ?」
カスミがミズカの頭を指しながら聞く。ミズカは思ってもみなかった質問に顔をしかめた。
「違うよ! 部活で髪を切ろって言われたの!」
「部活って、もとの世界のか?」
タケシが聞くとミズカは頷いた。
「へぇ~、切らされるんだ~」
「なんかすごいな」
マサトとサトシは感心した様子である。そもそも、この世界には部活は馴染みのないものだ。学校単位のクラブチームのようなものだと説明を受けたからわかるが、その実態までは具体的にはわからない。
「で、その部活はどうなのよ」
「えっ」
カスミに聞かれ詰まってしまった。嫌な事を思い出す。
「あー、厳しいんだよね~。もう大変!」
ミズカは苦笑して、頭を搔いた。本当は、別に厳しい事などどうでも良いのだが。
「部活の同級生とも仲良くやってるの?」
鋭いな、とミズカは思った。悲しいことや辛いことがあるといつもカスミはいち早く自分の異変に気づく。しかし、今は仲間たちと再会し、楽しい時間を過ごす予定なのだ。急に相談することもしたくない。
「もちろん! だって5人しかいないんだもん」
だからミズカは明るく笑って見せた。
「……そう」
カスミはそれ以上、何も問わなかった。が、少し変には思う。自分の好きなことをしているのなら、ミズカが最初に出る言葉は「楽しい」のはずだ。楽しいという言葉は、今のところない。
ミズカはカスミから目を逸らす。本当は無視されて虐められている。楽しいなんて思っていない。カスミは4人と楽しそうに話している。
ミズカは、せっかくポケモン世界に来られたのに楽しめそうになかった。
「ミズカ、どうしたんだよ」
サトシに言われて我に返った。ミズカは、軽く首を横に振る。
「なんでもない!」
元気よく見せながら答える。しかし、もとの世界の事を忘れるためにこの世界へ来たのに、どうしても頭から離れなかった。楽しそうな5人が、今は遠くに感じる。
「お姉ちゃん、本人に聞いた方が早いんじゃないの?」
「そうかも!」
「……ねぇ、ミズカって、カスミがいるから、狙って来たの?」
「え?」
マサトに聞かれ、ミズカは聞き返した。気づけば森の中を歩いている。全く話を聞いていなかった上に、上の空だった。
「もしかして聞いてなかったわけ?」
カスミは顔をしかめ、ミズカの顔を覗いた。