20章 中学の試練
――早く……あの世界に行きたい。皆に会いたい。会って、心を休めてバトルして……、好きなことやって……、忘れたい。部活も……辞めたいよ……。
鉛筆を持つ手に力が入る。自分が何をしたというのだろう。なんでこっちの世界だと何かしらで上手くいかないんだろう。ポケモンの世界で、こんな苦労したことはないのに。いつも楽しくて帰りたくないくらいなのに。
そんなミズカには一つ転機があった。二ヶ月もすれば、ミズカの家族は一軒家に引っ越す。念願の自分の部屋も手にいれることが出来るのだ。つまり、部活を辞めてしまえば、昔のようにいくらでもポケモン世界に行けるようになる。
さすがに部活を辞めなければ、いくらでも行くのは難しいが。部活は、朝練もあって睡眠をしっかり取らないとならない。毎日あるのに、今の状況ではあまり行けない。そもそも部活に疲れて、帰ったあとは食事をして、お風呂に入ったらすぐに眠りについていた。
それに、ミズカにとって地獄はこれからだ。夏休みがある。無視されている状況で、毎日、弁当も一人で学校もない。そんな地獄の生活が約40日間ほど続くのだ。彼女が虐められているのは、部活だけ。
クラスでは虐めどころか、仲が良すぎるくらいだ。ただし、二人は除く。その内の二人はテニス部なのである。だが、クラスにいるにも関わらず、クラスの人間は誰一人として、ミズカが部活内で虐められていることを知らなかった。
無論、担任も知らない。二人は、クラスではすっかり優等生気取りなのだから。ミズカも下手にクラスを分断させないように隠して、無理に笑うようになっていた。今では、癖になっている。時々学校へ行くのにも辛い。そんな時は決まって、ポケモン世界に行きたいと、向こうの世界の事を思い浮かべていた。
髪の毛を触る。ロングヘアだった髪はバッサリショートになっていた。これも、部活の顧問の言うことを聞いたから。仲間たちに会ったら、どんな反応をするだろう。驚くだろうか。それとも最初は誰だか気づかれないかもしれない。
ポケモン世界に行きたい……。胸が締め付けられる思いをしながら、ポケモン世界に思いを馳せた。
「あれ? なんであたし……マサラタウンに?」
ミズカは今の状況が全く掴めなかった。自分の目には、マサラタウンが映っている。最近、もとの世界で、アニメを見ないせいだろう。そのせいで何故自分がこのカントー地方のマサラタウンにいるのかわからない。
アニメの内容も全く知らない。サトシ達が今、ホウエンにいるのか、それとも、自分が今いるこのカントーにいるのか。サトシはバッジをゲットしているのか。ハルカはコンテストリボンをゲットしているのか。バッジを八つ集めリーグをやっているのか。リボンを五つ集めグランドフェスティバルをやっているのか……。はたまた、違う目標を立てて新たな旅をしているのか……。
しばらく、マサラタウンを見渡しながら考える。しかし、当然何も知らず、当然答えなどわかるはずもなかった。そして、思う。そういえば、以前も手鏡に行き先を伝えなかったために、マサラタウンに飛ばされたことがあった。ミズカにとっては随分前の記憶で忘れていた。
オーキド研究所へ向かえば、何かわかるだろう。ミズカはマサラの土地を歩き始める。オーキド研究所が小さく見えてきた。その先にポケモンらしき姿がある。頭には緑の葉っぱ、体は黄緑で赤い綺麗な瞳……。他でもない、自分のポケモン。チコリータだ。
「チッコ!!」
チコリータはミズカを見るなり、走ってミズカの胸に飛び込んで来た。チコリータは主人との久しぶりの再会で嬉しそうだ。
「久しぶり、チコリータ。元気だった?」
ミズカはチコリータを抱き返しながら話しかけた。チコリータはニコニコして頷く。
「でも、よくわかったね。あたしショートなのに……」
そう、今は昔のように長いロングヘアではない。ショートで、そこら辺の男の子より短かった。遠くからでは服装が似ている人というだけで、まず、気づかないだろう……。
それは、もとの世界でもよくあることだった。
鉛筆を持つ手に力が入る。自分が何をしたというのだろう。なんでこっちの世界だと何かしらで上手くいかないんだろう。ポケモンの世界で、こんな苦労したことはないのに。いつも楽しくて帰りたくないくらいなのに。
そんなミズカには一つ転機があった。二ヶ月もすれば、ミズカの家族は一軒家に引っ越す。念願の自分の部屋も手にいれることが出来るのだ。つまり、部活を辞めてしまえば、昔のようにいくらでもポケモン世界に行けるようになる。
さすがに部活を辞めなければ、いくらでも行くのは難しいが。部活は、朝練もあって睡眠をしっかり取らないとならない。毎日あるのに、今の状況ではあまり行けない。そもそも部活に疲れて、帰ったあとは食事をして、お風呂に入ったらすぐに眠りについていた。
それに、ミズカにとって地獄はこれからだ。夏休みがある。無視されている状況で、毎日、弁当も一人で学校もない。そんな地獄の生活が約40日間ほど続くのだ。彼女が虐められているのは、部活だけ。
クラスでは虐めどころか、仲が良すぎるくらいだ。ただし、二人は除く。その内の二人はテニス部なのである。だが、クラスにいるにも関わらず、クラスの人間は誰一人として、ミズカが部活内で虐められていることを知らなかった。
無論、担任も知らない。二人は、クラスではすっかり優等生気取りなのだから。ミズカも下手にクラスを分断させないように隠して、無理に笑うようになっていた。今では、癖になっている。時々学校へ行くのにも辛い。そんな時は決まって、ポケモン世界に行きたいと、向こうの世界の事を思い浮かべていた。
髪の毛を触る。ロングヘアだった髪はバッサリショートになっていた。これも、部活の顧問の言うことを聞いたから。仲間たちに会ったら、どんな反応をするだろう。驚くだろうか。それとも最初は誰だか気づかれないかもしれない。
ポケモン世界に行きたい……。胸が締め付けられる思いをしながら、ポケモン世界に思いを馳せた。
「あれ? なんであたし……マサラタウンに?」
ミズカは今の状況が全く掴めなかった。自分の目には、マサラタウンが映っている。最近、もとの世界で、アニメを見ないせいだろう。そのせいで何故自分がこのカントー地方のマサラタウンにいるのかわからない。
アニメの内容も全く知らない。サトシ達が今、ホウエンにいるのか、それとも、自分が今いるこのカントーにいるのか。サトシはバッジをゲットしているのか。ハルカはコンテストリボンをゲットしているのか。バッジを八つ集めリーグをやっているのか。リボンを五つ集めグランドフェスティバルをやっているのか……。はたまた、違う目標を立てて新たな旅をしているのか……。
しばらく、マサラタウンを見渡しながら考える。しかし、当然何も知らず、当然答えなどわかるはずもなかった。そして、思う。そういえば、以前も手鏡に行き先を伝えなかったために、マサラタウンに飛ばされたことがあった。ミズカにとっては随分前の記憶で忘れていた。
オーキド研究所へ向かえば、何かわかるだろう。ミズカはマサラの土地を歩き始める。オーキド研究所が小さく見えてきた。その先にポケモンらしき姿がある。頭には緑の葉っぱ、体は黄緑で赤い綺麗な瞳……。他でもない、自分のポケモン。チコリータだ。
「チッコ!!」
チコリータはミズカを見るなり、走ってミズカの胸に飛び込んで来た。チコリータは主人との久しぶりの再会で嬉しそうだ。
「久しぶり、チコリータ。元気だった?」
ミズカはチコリータを抱き返しながら話しかけた。チコリータはニコニコして頷く。
「でも、よくわかったね。あたしショートなのに……」
そう、今は昔のように長いロングヘアではない。ショートで、そこら辺の男の子より短かった。遠くからでは服装が似ている人というだけで、まず、気づかないだろう……。
それは、もとの世界でもよくあることだった。