20章 中学の試練

ミズカは、小学校を卒業して、中学へと入学していた。中学校入学からは、もう二、三ヶ月が経っている。小学校が恋しい。そんなミズカの入った部活はソフトテニス部だった。

このテニスというスポーツが魅力的だった。しかし、部活はこの学校で一番厳しい部活。毎日のようにあり、他の新入生はもちろん入部せず、ミズカの学年で入ったのは、彼女を合わせ、五人だった。

人数が少なければ、仲良くできそうなものだが、現実は全く異なった。虐めである。彼女は虐めにあっていた。別に何日か前までは虐めの標的はミズカではなかった。

――ヤダな……。

ミズカはまだ着せられた制服を身に纏いながら、教室の外を眺めた。ため息が出る。授業の内容はまったく入って来ない。

ここ数日で何が起きたのか。ミズカの前に虐められていた子が辞めてしまったのだ。虐めが原因で。厳しい部活の中で虐めに遭えば、大抵の人は辞めるだろう。

では、何故ミズカが虐められるようになったのか。前に虐められていた子を庇っていたからである。その子はお弁当を一人で食べていた。だから、一緒に食べていたし、風邪で休んだと聞いた時も、心配して電話もしていた。

しかし、耐え切れなかったらしい。その子は辞めてしまった。いや、もしかしたら、自分の行為も重荷だったのかもしれないと、今になってミズカは思う。何故かと言えば、ミズカが体調を崩して休んだ日に辞めたから。本人から辞めたという一言も貰えなかった。言いづらかったのかもしれない。

その子が辞めてからと言うもの、庇っていたミズカが標的になった。一人で弁当を食べ、一人冷たい視線を浴びながら、練習に参加する。ペアを組んでの練習が一番の地獄だった。なんとか先輩にお願いして、ペアを組んでもらう工夫をした。

しかし、ミズカが虐められている理由は他にもあった。本人は気づいていないが、運動神経抜群ということで嫉妬されていたのである。運動神経が抜群の彼女はテニスも上手く、厳しい顧問に気に入られていたのだ。そんな事を本人は知るはずもなかった。何故なら、小学生からテニスをやっていて上手い子がいたから。その子と比べたら、自分は下手くそだと思っていた。
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