19章 非公式のポケモンコンテスト

「大丈夫かい?」
「ミズカ!」

シュウがロゼリアをボールに戻し、駆け寄って来た。ハルカ達も駆け寄って来る。

「なんとか……。ポケモンセンターで安静にしていればね」

ミズカは顔を上げた。真っ青になってる。貧血みたいになっている。

「だから……、シュウが、決勝に出て」
「え?」

シュウは驚いた。負けといて出るわけにもいかず、困った表情を浮かべた。

「ここまでのようね」

ジョーイが、気を利かせてコップの入った水を持って来た。ミズカは受け取りながら、こくりと頷く。

「はい……、棄権します」
「わかったわ。あなたは、ポケモンセンターに戻って休みなさい。決勝にはシュウ君に出てもらうわね」
「でも、僕は……」

負けたから断ろうとしたのだろう。しかし、ミズカはシュウの言葉を遮った。

「たしかに、バトルにはあたしが勝った。でも、コンテストバトルにはなってなかった……。やっぱりシュウの勝ちだよ。だって、あたしはバトルをやってただけだもん」

青白くなった顔でニコッと笑う。

「シュウ、やりましょうよ! あたし、絶対決勝に上がるかも!」

ハルカにそう言われ、シュウは少し考える。ハルカとコンテストバトルをするのは悪くない。もし周りが許してくれるなら、ミズカが頷いてくれるなら……。これは公式のコンテストではない。

ギャラリーもシュウが出ることを望んだようで拍手していた。

「わかりました。僕が決勝に出ます」
「やったかも!」

シュウが、OKを出すと、ハルカはまだ決勝に出ると決まったわけでもないのに、跳び上がって喜んだ。

「お姉ちゃん、まだ決勝に出るって決まってないじゃん」

マサトがそれを見てツッコんだ。ハルカは苦笑する。

「さて、それじゃ、あたしはポケモンセンターに戻るわ」

少しよろけながら、ミズカは立ち上がった。

「誰か着いて行ってあげてくれないかしら」
「自分が行きます」
「え、いいよ。あたし……このくらいなら一人で……」
「何言ってるんだよ。今だって軽くフラついてたじゃないか」

サトシに言われ、口を噤む。

「無理することはないさ。さ、行こう」

タケシが言った。ミズカは頷く。

「ハルカ、頑張ってね」
「もちろんかも」

ハルカが大きく頷いたところを見て、ミズカはタケシと一緒に歩いて行った。その後ろをエーフィも歩く。

「さて、すみませんでした。この勝負はミズカさんの棄権により、決勝に進むのはシュウさんにしたいと思います」

ジョーイさんの言葉が公園に響いた。ギャラリーもシュウの複雑な気持ちを汲み取ってか、もう一度拍手を送った。

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