19章 非公式のポケモンコンテスト

「キルリア、宙にマジカルリーフ! 念力で螺旋をつくって!」
「キルキル!」

空に向かってマジカルリーフは放たれ、螺旋を描いた。

「その中にジャンプ!」

ミズカの指示にキルリアは頷き、螺旋の中に入る。

「もう一度マジカルリーフ!」
「キル!」

螺旋を描いたマジカルリーフが弾け、紙吹雪のひらひらと舞っていく。くるりと前方に回転して綺麗に着地した。非公式とは言っても、観客が多く。キルリアの演技に歓声が飛び交う。

ミズカはホッとした表情を見せた。非公式コンテスト。今のは一次審査だった。ここにミズカが出ているということは、すなわち熱が下がったということだ。彼女はなんとか気合で一晩の間に熱を下げた。

「あ~、緊張した……」

息を整える。キルリアも隣で息を撫で下ろしている。そんなキルリアの頭をミズカは優しく撫でた。キルリアは照れたように笑顔になる。

「ハルカとシュウの後だったからな」

タケシに言われミズカは苦笑した。彼らはミズカがやる前にすでに終わっており、しかも慣れているだけあって、さすが完成度が高かった。ポケモンとの息もバッチリで、堂々と指示を出し、ポケモンもそれに応えて演技をこなしていた。見ていて気持ちが良かった。

「具合いはどうなの?」

マサトが心配する。熱が下がったとはいえ、病み上がりだ。安心は出来ない。

「平気。まぁ、良いとは言えないけどね」
「大丈夫なのか?」

サトシは顔をしかめる。ミズカは少し考えるが面倒になり、適当に頷いておいた。考えるのをやめたということは、体調は芳しくないということだ。ミズカは自分でわかっていながら、知らないふりをした。

「二次審査に進んだ上位4名を発表します」

非公式コンテストは、上位8名ではなく、上位4名らしい。ミズカは息を飲む。ちなみに、司会はジョーイだ。

「一次審査を見事に進んだのは、シュウさん。ハルカさん。ムサリーナさん……ミズカさんです!」

名前を呼ばれミズカは目を見開いた。驚きと興奮、そして喜びが入り混じる。

「ミズカ、やったわね!」

ハルカが話かけた。ミズカは頷く。余程、自分が二次審査に進出できことに驚いているらしい。反応が鈍い。

名前を呼ばれた一人、ムサリーナを見る。誰も気づいていないが、あれはロケット団のムサシだ。ミズカは突っ込もうか迷ったが、悪さをする様子はない。今日はいいか、と放っておくことにした。

「キルリア……」
「キル?」
「ありがとう!!」

ギュッとキルリアを抱きしめる。キルリアも一緒に喜んだ。

6/12ページ
スキ