「ねぇ、コンテストの演技って何やればいいの？」
「ん～、とにかく魅せることだな！」

ミズカの質問にサトシは答えになっていない答えを返した。サトシに聞いたのが間違いだったとミズカは思う。

しかし、練習はしなくてはならない。練習の方法を自分なりに見つけようとするが、コンテストに今まで興味がなかったせいかよくわからず、頭がこんがらがる。

とにかくまずはコンテストで使えそうな技を考えて、出していかなければならない。感覚人間のサトシだって、まずは見てから助言をくれるつもりだろう。

「コンテストはね。ポケモンの魅力を一番に引き出せる場なんだ。だから、ポケモンにあった自然な状態での演技が一番いいと思うよ」

後ろから声がした。二人は振り向く。すると、マサトがメガネをきらめかせて立っていた。どうやら、ついてきたらしい。

「自然な演技……か。難しいんですけど……」

ミズカは頭を搔く。サトシの話より輪郭は見えるが、自然にやれと言われれば言われるほど、自然と言うものがわからなくなるのも事実だった。

「僕が教えてあげましょうか？」
「へ？」

今度は前から人が歩いてきた。緑色の髪の毛に薄紫色の上着の少年。ハルカのライバル、シュウである。

「君、初めましてだね。僕は、シュウ」
「え、あ、初めまして。あたし、ミズカ」

突然のシュウの登場にミズカは驚く。シュウの存在はアニメで見ていて知っている。最近の実績はまったくわからないが、とにかくハルカがいつもからかわれているイメージがある。

それは、サトシとシゲルの関係のようにミズカは思えていた。

おそらくシュウはサトシとマサトが目に入って、話しかけてきたのだろう。

「非公式コンテストに出るのかい？」
「えぇ、まぁ……」
「お姉ちゃんに誘われちゃったんだよね」

マサトの言葉にミズカは困った表情を浮かべ苦笑した。シュウは察したのか軽くため息をつく。

「ようするに、ハルカ君に誘われたのはいいが、彼女には何にも教わらずに何をしていいかわからないわけだね？」
「その通りです。というか、教えてもらおうと思ったら、練習するからって言って……」
「ハルカ君は消えたと……」

シュウの推測にミズカはため息混じりに黙って頷いた。

「だろうと思ったんだ。何していいかわからない感じだったから……。それに、君達もいたからね。声をかけてよかった」

シュウは、サトシとマサトを見た。二人は顔を見合わせる。やはり、ハルカの仲間が一緒だったからシュウという少年は声をかけて来たらしい。

「コンテストの基本を教えて上げるよ」
「嘘！！　ホントに！？」

ミズカの顔が一気に明るくなった。救いの神とはこの事かもしれない。そのくらいに彼女は思えた。