18章 チルタリスゲット! オニドリルの願い

「ミズカ……」

心配して自分を見ているサトシとマサトを見て、ハッとする。そんな心配されても困る。これは自分自身の問題だ。

「なんちゃってね!」

急に無理矢理明るくした。

「はい?」

二人とも目が点になっている。

「あたしがこんな事でへこむわけないでしょ! 頑張ってよマサト! マサトはかなり知恵があるからトレーナーになったらすごく強くなりそうだし!」

ミズカは出来るだけ自然に振る舞うよう心掛けた。

「じゃあ、僕がトレーナーになったらバトルしてよ!」
「いいよ」
「なんか、急に体を動かしたくなってきた。僕、散歩してくる」

マサトはミズカに良いと言われ嬉しかったのか外へ出ていった。

「皆、林檎食べる?」

テーブルに置いてあったフルーツのバスケットから林檎を取り、その横に置いてあった果物用のナイフを手に取り、皮を剥きはじめた。とにかく何かをやっていないと落ち着かない。

「ミズカ、自分を責めてないか?」

サトシの言葉に思わず手を止めてしまった。

「前にチコリータを守り切れなかった時と同じ顔してる」
「ばれてた?」

それだけ言ってミズカはまた皮を剥く。

「タケシも気づいてるぜ。さっき言ってた」

しばらく沈黙が続いた。それを破ったのはミズカだ。

「はい、食べやすく八等分にしたよ。まぁ、まな板がなかったから大きさかなり違うけど気にしないで」

テーブルに八等分された林檎を乗っけた皿を置く。不安そうにエーフィとピカチュウはミズカを見つめた。

「そこまで気にすることないと思うぜ。時間がかかっても皆が良い方向に行ったんだ。良かったじゃないか」
「それはそうだけど……、でも、あたしのせいじゃん。チコリータもエーフィも傷ついたの。不安なんだよ。あたしは本当に強くなってるのかって……」
「強くなってるんじゃないのか?」

サトシは一つ林檎を取って口に運んだ。ミズカはサトシにあっさりそう言われ目をパチクリさせる。林檎をもごもごとさせて飲み込むと、サトシは2つ目に手を伸ばして話を続ける。

「だって、あのトレーナーの心はミズカが入れ替えたんだろ? 前には出来なかった事、ちゃんと出来てるじゃないか。それってよくわからないけど、強くなってるって事だと思うぜ! マサトだって、ミズカみたいにポケモンの気持ちがわかるトレーナーになりたいって言ってた。トレーナーはそういうのを含めて強くなるって言うんだろ?」
「ピカピカ!」
「フィー!」

サトシの言葉にピカチュウもエーフィも頷いた。自分は何を焦っているのだろう、ミズカは思った。もちろん強くなることも大切だろう。しかし、強さだけ求めていても何もならない。

人の気持ちポケモンの気持ちをわかり、大切にすることが、一番大事で強くなる事なのではないだろうか。そう思うとミズカは力が抜け自然と笑みが溢れた。

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