18章 チルタリスゲット! オニドリルの願い

「オニドリル」
「オニ?」
「行こうぜ。次アイツに会ったら今度は卑怯な手を使わずに、勝たなきゃならねぇからよ」

その言葉に、嬉しくなったのかオニドリルに自然と笑みがこぼれる。そして、一人と一匹は、ミズカ達とは逆方向に歩き始めたのだった。

一方、ミズカ達はポケモンセンターに着き、ジョーイさんに急いでエーフィを治療してもらった。もう大丈夫だと、ジョーイさんから聞いて、やっとミズカは安心することができた。

――もっと、強くならなきゃ。

新たな仲間を加えたミズカは、さらに上を目指そうと思い、心で誓う。ポケモンセンターのロビーに戻ると、ジョーイさんから借りたのか救急箱を持ったハルカがいた。

「ミズカ。消毒しないとばい菌入るかも」

そういえば、頬を切っていたのを忘れていた。ミズカは苦笑する。マサトがハルカの向かいに座らせた。ミズカは大人しく座って、消毒されるのを待つ。

「痛い、ハルカ! 染みる!」

消毒が始まるとミズカはうるさかった。消毒薬が傷の開いた頬に染みて、顔を歪めた。

「自業自得! あたしのせいにしないで欲しいかも」

ムッとした表情で、ハルカは言う。そう別にハルカが悪いわけではない。むしろミズカはありがとうと言うべきなのだ。

「それにしても、ミズカの蹴りはすごかったよね」

ハルカの隣にいたマサトは腕を組んで言った。

「なんで、今まで喧嘩強いの隠してたの? サトシとタケシも知らなかったって……」
「アハハ……。痛い」

ハルカに聞かれ、笑って誤魔化すつもりだったのだが、また頬に染みて顔を歪ませてしまった。別に隠すつもりはなかった。ただ必要がなかっただけだ。

「大丈夫か。ミズカ」

そんな所でサトシとタケシが来た。二人とも、ミズカの歪んだ顔を見て笑う。

「大丈夫ではないみたいだな」

タケシは苦笑しながら、ミズカの頬を見て言った。

「いや、平気!」

ミズカは強がるが、

「はい出来たかも!」

勢いあまって、ハルカはガーゼをミズカの頬に押し付けてしまった。

「いったーい!」

ミズカは頬に激痛が走り、押さえながら飛び跳ねる。たしかに、傷の部分を触られると痛いだろう。ましてや、押し付けられたのだから尚更痛いに決まっている。

「お姉ちゃんやりすぎだよ」

マサトは呆れた表情でハルカを見た。今のはハルカが悪い。

「ごめん、つい手が滑っちゃったかも!」

笑いながら、ハルカは頭を搔いた。様子を見るに、今のはわざとやったらしい。

「……タケシにやってもらえば良かった」

ミズカはボソッと素直に思った事を言う。

「酷いかも!」

酷いのはハルカなのにも関わらず、彼女は怒る。そして、ミズカの頬を思いきりつまんだ。

「ハルカ。い、いひゃい……」

痛さのあまりじんわりと涙が出てきた。涙が出てきたところでやりすぎを自覚したのか、やっとハルカが解放してくれた。 

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