18章 チルタリスゲット! オニドリルの願い

「行けよ。エーフィもお前がいたほうが安心するだろ」

静かな声でトレーナーはそう言った。

「どういう意味?」
「俺、今までポケモンの気持ちなんて考えてなかったからな。お前はポケモンの気持ちを、これからも、今だって大事にしたほうがいい」

ミズカは目を見開く。ポケモンの気持ちを考えていなかった。それは彼が彼自身と向き合った証拠だ。

嬉しくなり笑顔になる。

「俺は一からやり直す」
「それがいいね」

ミズカはニコッと笑う。オニドリルも嬉しそうに目を輝かせた。

「それで、散々お前を殴って酷い目に遭わせてあれなんだけどよ。チルタリスをもらってくれねぇか?」
「え……?」

思いがけない言葉に思わず聞き返した。彼からチルタリスのモンスターボールを渡される。

「こいつ、すごくお前が気に入ったらしいんだ。それに、俺も、オニドリルと二人でやり直していきたいと思ってる」
「そう……なの?」

ミズカはチルタリスに聞く。チルタリスは深く頷いた。 そして、もふもふの身体をミズカの身体に擦り寄せてくる。

「べ、別に無理にとは……」
「いいよ。あたしで良ければ」

嬉しくて、ついミズカ照れ笑いになった。そんな笑顔の彼女を見て、思わずトレーナーは顔が赤くなった。

「ん? どうしたの? 赤いよ?」

自分の事となるのサトシ同然の鈍感なミズカ。ハルカは、そんなミズカを見て、こんなところもサトシに似ているんだと思う。

「な、なんでもねぇ。そういえば、お前ミズカって言うんだな」

さっきから、サトシ達がよく呼んでいたため、頭に入っていたらしい。

「うん! あなたは?」
「タツヒコだ」
「タツヒコね! それじゃ。あたしはエーフィ、連れて行かなきゃ……」

ミズカは後ろを向き、タケシの抱いてるエーフィの所へ行く。

「チルタリスも! ほら、行くよ!」
「チル!」

チルタリスは嬉しそうにミズカの所に走っていく。

「チルタリス! 元気でな! それと、今まで御免な!!」

大きな声でチルタリスにタツヒコは叫んで言った。チルタリスは羽を大きく広げて振る。許してくれたようだ。

「あ、ミズカ!」
「何?」
「いや……、頑張れよ!!」

何か他に言いたげだったが、それ以上ミズカは何も問わず深く頷いた。ミズカに次いつ会えるかわからない。だからこそ、次に会ったときには、友達になりたいと言いたかったが、それは今言えることではない。

ミズカが自分に手を振って歩いて行くのを見送りながら、自分の言いたいことは閉ざした。
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