18章 チルタリスゲット! オニドリルの願い

「で、またここですか……」

ミズカはまたも見覚えのある一本の大きな木を見て、ため息をついた。

「ハルカ探険隊、今日は迷いの森で迷子になっています! 果たして、私達はこの森から抜ける事が出来るのでしょうか!」

ハルカはすっかり趣味の探険隊ごっこに熱中していた。少し休んで、元気になったらしい。

「お姉ちゃん……。こんな時に探険隊なんかやらないでよ……」

ボソッとマサトはハルカに言った。その隣では、タケシがガイドブックか何かを読んでいる。

「タケシ、あったか?」

その本をサトシが覗き、タケシに聞いた。ミズカも本を覗く。

「どうやら、ここら辺では有名な森らしいな」
「それってまさか」

ミズカはひきつった表情でタケシを見た。

「迷いやすい森らしい」

ただでさえ、よく迷うのに迷いやすいと有名な森で彼らが迷わないはずがない。

「どうすんの? あたしもとの世界帰っていい?」

いい加減飽々してきたのかミズカはそんなことを言う。もちろん、これは冗談だ。

「おい、自分だけ逃げるとかなしだぜ」

それを本気で聞き入れてしまったのだろう。サトシはミズカに言った。

「冗談だって、あたしそんな薄情なやつじゃない。それに今回はしばらく帰らないつもりだし」

ミズカは苦笑しながら言った。サトシは冗談でホッとした表情をした。

「あ! そうだ。ねぇ、空からだったら迷わないんじゃない?」

空を見上げて、ミズカは言った。

「なるほど、その方法ならこの森から抜けられるかもしれないな」

ガイドブックを閉じ、タケシが賛成する。

「どういうことだ? 俺達飛べないぜ?」
「違うよサトシ。スバメかアゲハントに案内してもらうんだ」

いつから聞いていたのかわからないが、マサトはそう答えた。サトシは納得した表情を見せる。

「よーし、そうと決まればスバメ、君に決めた!」
「スバー!」
「スバメ、空から俺達を案内してくれ!」

サトシが言うと、スバメは頷き空から案内しはじめた。ミズカ達はどんどん歩いて行く。そして、やっと違う景色が見えてきた。

「やっと、違う道に出てきたね!」

マサトはホッとした表情で辺りを見回した。

「スバメのおかげだね」

ミズカは深く深呼吸した。匂いも空気もさっきの道と変わらないが、彼女にとってはとても違うふうに思えるらしい。しかし、そんな空気はぶち壊された。

「おい! 早く立ちやがれ! カス!」
「チル……」

そんな怒鳴り声とそれに脅えてるのであろうポケモンの鳴き声が聞こえた。思わずミズカ達は、その場に固まる。すると、木々の間をすり抜けて、今の脅えた声の持ち主、チルタリスがこちらに飛んできた。あちらこちら傷ついている。

「チルチル!」

助けて欲しいらしい。チルタリスは一番近くにいたミズカにそう訴えかける。

「出てきて、エーフィ」

ミズカは何の戸惑いもなくエーフィを出した。
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