17章 泣き虫キルリア

「懐かしいね。たしか、その日って、サトシとカスミがポケモンセンターのロビーで大喧嘩してた日だよね?」
「へぇ~、サトシとカスミが~! 喧嘩してるとこ見たいかも!」
「僕も!」

別にそんなつもりでミズカは言ったのではないのだが、ハルカとマサトは楽しそうに言う。

「なんで、俺の話になってるんだよ!」

そう突っ込むサトシをタケシとミズカは苦笑して見ていた。

――いっか。まだ、聞くには早いのかもしれない。

ミズカはそう思う。あの時のポケモンセンターを思い出した。サトシとカスミが喧嘩をする前に、サトシと二人でオーキド博士に電話をした。あの時にオーキド博士に、なぜ自分を呼んだのかと聞いたところ、『今はまだ早い、いずれ教えるわい』と言われたのを思い出した。

聞くタイミングがこうもズレると、ミズカはもうどうでもよくなった。

「ミズカは、サトシと喧嘩したことないの?」

マサトが聞いた。サトシはハルカとも喧嘩したりする。それで、ミズカはどうなのか気になったのだ。

「カスミとは喧嘩した事あるけど、そういえば、サトシとは……ないね?」
「たしかにミズカとは喧嘩したことないな」

聞かれて考えてみるがやはり、喧嘩という喧嘩はしたためしがない。そんな会話をするミズカ達、道に迷ってたことをどうやら忘れているようだ。

果たして、この迷い道から抜けられるのだろうか。

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