17章 泣き虫キルリア

「いいよ、やめて!」

キルリアは言われた通り、念力をやめた。サボネアのミサイル針は地面に落ちる。ここで、サトシがハルカの質問に説明し始めた。

「あぁ、あの時はポケモンセンターでポケモンを預けてて、あいつらがそのポケモンセンターのポケモンを全部取っちゃったんだ」
「それで、どうしたの?」

マサトは、ミズカとキルリアのバトルを横目にサトシを見る。

「サボネア、二―ドルアームだ!」
「ハブネーク、まきつく!」
「キルリア、かわして!」

しかし、キルリアはかわすことが出来ず、ニードルアームを喰らい、ついには、ハブネークに巻きつかれた。

「キル……」
「あ~ら、ジャリガール、少し弱くなったんじゃないの?」

すっかり浮かれて、ムサシはミズカに言う。

「何よ! ……あ、そうだ」

ミズカは、ムサシの挑発に軽く乗りながらも、ある事をひらめいた。

「俺達はそれで手持ちがいなかったんだけど、たまたま、ミズカはエーフィを預けていなかった」
「会ったばかりで、そこまでエーフィの体力も減っていなかったからな」

サトシの説明にタケシはそう付け加えた。

「で? ミズカはどうやって、ロケット団を……」
「キルリア、なきごえよ!」
「キル~!!」

かん高い声で、キルリアはなきごえをする。というより、半分泣いていて、なきごえというより、いやなおとに近い。サトシ達の会話もそれでまた途切れた。しかし、そのおかげか、ハブネークはキルリアを開放する。ミズカはこれを狙っていたのだ。

「あ、ハブネーク! 何やってるのよ!」

当然、ムサシは怒る。

「誰が、弱くなったって? キルリア、これから全力でいくわよ! 影分身!」

どうやら、気に触れたらしい。というより、今のミズカにとっての一番の地雷だ。

「キル!」

キルリアは、何体も分身を作った。その数およそ十体だ。

「そのまま、ロケット団に向って走って!」

ミズカがいうと、キルリアは走りはじめた。ミズカもその後をついて走る。

「え、何する気よ、ジャリガール……」
「さぁ……」

唖然とするムサシにコジロウは首を傾げながらそう答える。

「とにかく、ハブネーク。ポイズンテールよ!」
「サボネアは、全てのキルリアに毒針だ!」
「キッ!?」

キルリアはその場に立ち止まる。

「キルリア、落ち着いて。ジャンプしてかわすのよ!」

そう言われ、キルリアはジャンプした。ただジャンプしてかわすだけでなく、目の前にいる二体を飛び越える。なんというジャンプ力だろう。ちなみに、こういう事にすっかり慣れてしまっているミズカも攻撃をすんなりかわす。

「よし! キルリア、ロケット団にマジカルリーフ!」
「キール!」

キルリアは、地べたに足がつく前にマジカルリーフを出す。ロケット団に命中し、彼らは十メートルほど先に吹っ飛んだ。その反動でなのか、うっかりロケット団は2匹を入れた檻を放してしまう。
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