17章 泣き虫キルリア

「ちょっと痛むかもしれないけど、我慢してね」

傷薬をキルリア向ける。スプレーになっており、いたって簡単だ。ミズカは、キルリアに傷薬を掛けた。我慢できなかったらしく、キルリアは泣き始めた。

「うわわ……ごめん! 痛かったね!」

ミズカは焦る。まさか泣くとは思っていなかったのだ。しばらくして、キルリアは泣き止んだ。ミズカはホッとした。

「さてと、ポケモンセンターを探しにいきますか」

ミズカは軽く深呼吸をすると、ポケモン達と一緒に歩き始めた。

「……さっきまで、あんな晴れてたのに……」

ミズカは木の下から、勢いよく降ってくる雨を見つめていた。ポケモンセンターを探している途中、曇り空になり、怪しいと思っていたところで雨が降り出した。

最初のうちは小ぶりで雨宿りをするほどでもなかったのだが、だんだんと強くなってきてしまい、挙げ句の果てには雷まで鳴り始めていた。ミズカは、小さくため息をつく。横には自分にしがみ付いている、キルリアが目に涙を溜めながら、雨を見つめていた。ちなみに、自分のポケモンはモンスターボールに戻している。

ゴロゴロと鳴っている雷……、さっきより、だいぶ大きく鳴っている。だんだん近づいて来ているのがミズカとキルリアにはわかった。

「まいったな……」

不安そうな表情で、雨とまだ睨めっこ……、雷は苦手な方だった。もちろん、ポケモンの技となれば別なのだが。

「キル……」

キルリアは、そんなミズカの不安そうな表情に大丈夫だろうかと心配になる。ミズカはそれに気づいたのか、キルリアにニコッと笑って頭を撫でる。笑った顔は、笑顔というより、苦笑いに等しい。

「早く止まないかな……」

さっきから、そんな事ばかりを考えている。雷の音がまた一段と大きくなった。かなり近い。ピシャーンと落ちる音にミズカは思わず耳を塞いだ。キルリアはさっきよりも強くミズカにしがみ付く。ミズカは、キルリアを抱き上げた。キルリアの目には溜まった涙が一気に溢れ出す。

「平気平気、雷なんかすぐにどっか行くからね」

自分も怖いため、自分にも言い聞かせるように言った。

――そういえば、こんなポケモンに会ったのは初めてかもしれない。

ミズカはふと、自分の旅を振り返る。たしかに、臆病なポケモンや、人間を嫌うポケモンなどには出会った事がある。現に今、オーキド研究所にいるチコリータがそうだった。前に飼われていたトレーナーが悪い奴で人間を嫌いになっていた。今はチコリータはそんな事はないのだが、ふと思い出がよみがえった。

しかし、キルリアみたいにこんなに泣き虫なポケモンは初めてだ。アニメでは時々見るが、目の前でみた事はなかった。少し新鮮な感じがする。
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