16章 仲間と夢と

「行っちゃった……」

ナゾノクサと遊ぼうと近づいた幼いミズカは、去っていくナゾノクサを見て残念に思う。ここの人たちやポケモンたちからはあまり歓迎されていないようにも感じた。

しかし、自分が泣いたり、悲しい顔をすれば、きっとまたこの二人は戸惑う。ミズカはあちこちを見回し、何か興味が引かれるものをと探した。二人の悲しい顔は見たくない。

「……お兄ちゃん?」
「どうしたんだ?」
「あれ、ポケモン?」

木の上に、今にも落ちそうな生き物がいた。ポケモンは、先程シゲルから教えてもらった単語だ。早速、幼いミズカは使っている。

「そうだぜ。イーブイって言うんだ」
「落ちる……かな。助けなきゃ」

ミズカは何を思ったのか、木の下に行き、手を大きく広げた。

「イーブイ! ここに落ちて」
「ブイ?」
「落ちて痛いよ。助けてあげる!!」

強く言った幼いミズカの目は真剣だった。イーブイは、少し躊躇いを見せたが、ミズカの胸に飛び込んだ。イーブイをキャッチして尻餅をつく。お尻がジンジンと痛んだ。

「いたたたた。イーブイ、痛くない?」
「ブイ!」

イーブイがここに来て、初めて歓迎してくれたポケモンだった。イーブイがキラキラとした瞳で、頬を舐め来る。きっとお礼を言っているんだろうな、と幼いミズカは感じ取った。

「お兄ちゃん、イーブイと遊ぼ?」
「あぁ、良いぜ!」
「良いぜ、じゃないだろう。怪我でもしたらどうするんだい?」

シゲルが呆れたようにサトシにいう。サトシは苦笑した。何だかんだ、シゲルもミズカを心配してくれているようだ。ただ、シゲルは一切、一緒に遊んではくれない。まるで保護者のようだ。

ミズカと壁を作っているように見える。バリアードの作ったバリアみたいに見えない壁。見つめると目を逸らされた。

「シゲルも遊ぼうぜ。そんな所に突っ立ってたって面白くないだろう?」
「いいや、僕はいいよ」

遊ぶのが嫌なのか、シゲルはそう言った。

「何をして遊びたいんだ?」
「う~んとね、鬼ごっこ!」

サトシに聞かれ、ミズカはそう答えた。しばらくはイーブイを交えて、鬼ごっこで遊んだ。

「おーい! ミズカ! 来いよ!」

サトシが幼いミズカを呼んだ。笑顔を向けるサトシはなんだか辛そうだ。ミズカは不安になる。こんな彼は見たことがない。一緒に遊んだら変わると思っていたが、そうではなかった。
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