16章 仲間と夢と

「ごめん……。あたし、話し終わったから帰るね!」

ミズカは手鏡を出しドアを出した。この空気に耐え切れなかった。もう来ないほうが良いのかもしれない。次会ったらどんな顔をすればいいのかわからない。

ミズカはドアを開けた。ドアの向こうへ進もうとする。

「や……」

カスミは自分がどうしたら良いかわからなかった。まだ、彼女も十歳である。でも、このまま帰してはいけないのはわかった。ミズカの服の裾を掴む。

「ミズカ!」

サトシが呼んだ。ミズカは振り向かずに動きが止まる。

「また、空いてる時があったら、いつでも来いよな!」

サトシは言った。サトシには、ミズカの気持ちをすべてわかるわけではない。どうしたら良いかわからなかったが、今、言えることを言った。

そんな大事なことを話してくれたのは、きっと、ミズカが自分たちのことを大切に思ってくれているからだ。だったら、このまま気まずい別れ方はしたくない。

そもそも気にしなくていいことだ。さっきは、ミズカの初めての表情や初めて胸のうちを明けられて驚いただけ。

「そうよ! また連絡くれないと、あたし心配するんだから!」

カスミはミズカの服の裾を持ったまま、心配そうな顔で言う。

「そうそう! 私、そんなこと気にしないかも!」
「ミズカ! 僕、今度、サトシとバトルやってるところ見たいから来てよ!」
「ミズカはミズカのままさ」

ハルカも、マサトも、タケシも各々が気持ちを伝えてくれる。みんなの顔を見なくても、ミズカは声だけで温かさが伝わった。

「……いいの?」

ミズカは皆の方を向き、確認するように聞いた。すると、ピカチュウがミズカの胸に飛び込んできた。

「ピピカ!」
「ピカチュウ……」

ピカチュウは頷くと、勝手にモンスターボールからエーフィを出す。エーフィは状況が掴めていない。ピカチュウが説明し始める。と言っても、どこまで理解しているかはわからないが。

「もちろん! だって俺達仲間だろ?」

その光景を見ながら、サトシは口角を上げて言った。皆は頷く。その言葉にミズカは一気に力が抜け、その場に座り込む。向こうの世界へつながるドアは消える。目には涙がどんどん溢れてくる。

ピカチュウと、状況を理解したエーフィを抱きしめる。

不安でどうしようもなかった。仲間だと思われてなかったら、この話を聞いたとして、誰が受け止めてくれるのだろうと思った。違う世界に住む自分を仲間だと明言してくれたサトシは、きっと他意はない。

自然に出た言葉。それに頷いた仲間たちもきっとそうだ。その涙はしばらく続いた。

ミズカが泣き止んだ頃には、絨毯がびしょ濡れだった。泣き止んではいるものの、まだ目には涙が溜まったままだ。
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