16章 仲間と夢と

「なんなんだ? あいつら……」

サトシは首を傾げる。皆、ポカーンと窓を見つめた。ミズカは早々に、切り替える。ロケット団のことよりも、自分の話だ。

「ま、いいじゃん。でさ、皆に話したい事があるんだ。時間がないから、この話が終わったら、すぐに帰るけど」

ミズカは真剣な顔をしていた。サトシ達も、これは重大な話しなのだと思い、ミズカの話を聞くことにした。ミズカは座るのがソワソワするらしく、ドアの前に立ちながら話し始めた。

「あたし、ずいぶんこの世界に来てないでしょ?」
「あぁ、でもそれは忙しいからだろ?」

サトシがカスミに聞いたことをそのまま答える。

「そうなんだけど……。他にも来れない理由があるの」

ミズカの声は震えていた。

「あの、急にこんな話をして困るかもしれないんだけど……。実はあたしのお父さん、前とは違う人なの。ようするに今の父親は義理のお父さん」
「え……?」

カスミ以外、皆、状況を掴めないでいた。

カスミはミズカの母に付き合ってる人がいたのは知っている。しかし、結婚した事までは知らなかった。なぜなら、ミズカがこの世界にずっと来ていなかったからである。

この期間でミズカの母は再婚をしていた。

「あたしの両親離婚してて……。その両親が離婚する前までは、お母さんが夜働いてて、父親も帰ってこないから、夜に抜け出してこっちの世界に来てたの。でも、離婚してから、お母さんが夜の仕事辞めちゃって……。自分の部屋があればいんだけど、今の家は狭くて、どの時間を選んでもお母さんにすぐバレるんだよ……」

ミズカが自分が何を言ってるのかわけがわからなくなっていた。もう少し、整理しておけばよかったと後悔した。

サトシ達はなんていえばいいかわからなかった。いつも元気なミズカが、そんな大きなことを抱えていたことに気づかなかった。とくにサトシもタケシも一緒に旅をしていて、ミズカにはそんな素振りは一度もなかったと記憶している。

あったとすれば、きっとカスミの前だったのだろうと、サトシもタケシも思う。闇を抱えたミズカを見るのは初めてだった。

母親が夜に仕事をしていた。父親も帰ってこなかった。だから、ポケモン世界に来ていた。ミズカがどんな思いで話しているのかを考えれば考えるほど、何を言って良いかわからない。

「え……っと、それで、最近、今の義理のお父さんと、お母さんが再婚したんだけど……。来るタイミング全然なくなっちゃって……。ごめん……、もっと早く言っておけば良かったね……」

言葉が詰まる。声がさっきよりも震えてきた。しばらく皆黙っていた。気まずい空気が流れる。ミズカが予想していたことだった。やっぱり、駄目だった。

いくら心の広いサトシ達とはいえ、こんな自分を受け止めてくれるわけがない。寂しかったから、ポケモン世界に来ていたと告白したようなものだ。

それにずっと隠していたなんて、サトシ達はどう思っているのだろう。これは、また来たときに一緒に旅をしようなんて思ってもらえない。
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