15章 プラスルとマイナン!

あれから3ヶ月。ミズカの足はすっかり元通りになっていた。

そんなミズカは、ため息をついた。今はもとの世界である。崖に落ちて、プラスルとマイナンをゲットして以来、ミズカはあっちの世界に行っていない。

そんなに時間を空けてポケモン世界に来なかったことは、今までなかった。もちろん理由がある。

――部屋欲しい……。

ミズカは再度ため息をつく。あっちの世界に行きたい気持ちはすごくあるのに行けない。そんな苦痛にやりきれない気持ちでいた。前、夜はタカナオと二人だけだった。弟が寝れば、それはミズカの冒険の合図。ドアを開けてポケモン世界に飛び込んでいた。

しかし、この三ヶ月で、ミズカのこの世界での生活は一気に変わった。夜に働きに出ていた母親は、夜もちゃんといる。両親が離婚した。今は引越して、2DKの狭い家。自分の部屋なんてない。

それに今は、流れで、母が付き合っている人も住んでいる。最初は母親の仕事のお客さんで、すごく母親の事を気に入ってたらしく、いつしか、ミズカとタカナオとも遊ぶようになっていた。

ミズカにはなんとなく分かっていた。母親がいつしかこの男の人と、結婚する事を……。今は母と結婚前提に仲良く、四人で同居している。それでいい。それがみんなのためになる。

しかし、12月の引っ越した頃だった。ミズカはある事に気がついた。

――ん……? ちょっと待てよ……、お母さん夜の仕事、二月で辞めるって言ってた……。しかも、今、夜の仕事早く終わらして十二時は帰って来るから……。あたし、いつも夜にあっちの世界に行ってるから……無理じゃん!?

今の家は2DK。一つはリビング、一つは母親とその男の人の寝室、一つはミズカとその弟の寝室である。ミズカと弟の寝室にはドアがない。リビングから、ミズカが何をやっているのか丸見えなのである。

そんな状態でポケモン世界になんて到底行けるはずはない。

というわけで、今は、二月の二十四日……。ミズカの母親は完全に夜の仕事を辞めている。そして、ミズカは家の事情で色々と忙しく、夜は毎日疲れて早くに寝てしまい、気づいたら三ヶ月も経っていた。

こうして感じるのは、ミズカの世界はもうこの世界だけではないということ。自分の生活は、ポケモン世界にもあるということを感じる。

そんな今日は母親は仕事を辞めたという事で、会社でお送別会……。主役が母親とだけあって、母親が付き合っている男性もいない。そして何より、今日は朝まで帰って来ないだろう。

ミズカは、夜、タカナオが寝たあと、ドアを出してポケモンの世界へと行ったのだった。
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