15章 プラスルとマイナン!

「ミズカ!」
「……っ」
「立てるか?」

ミズカは首を横に振った。もう話せないほど足が痛い。歯を噛みしめる。そうしている間にもスピアーはどんどん近づいてくる。

「まずい……」

もうスピアーとの距離は数メートルしかなかった。ミズカとサトシは目を瞑る。刹那、「フィ!」と、エーフィの声がした。スピアーの動きは止まる。金縛りのようだった。

「ピーカーヂューウ!!」

今度はピカチュウの声がした。ピカチュウは強力な雷を放つ。あまりの威力に驚いたスピアーは逃げて行った。ミズカは放心状態。サトシは抱きついてきたピカチュウを受け止めると安心した表情を浮かべた。

「ミズカ! サトシ! 大丈夫!?」

ハルカ達が駆け寄ってくる。

朝早くハルカ達は、スバメに場所を教えてもらいながら来ていた。その途中スピアーに襲われている二人を見つけたのである。エーフィとピカチュウは主人を助けるため、一目散に走って行き、スピアーを追い返したというわけだ。

「俺は大丈夫だけど、ミズカが足を痛めてるんだ」

サトシは説明する。ミズカはまだ何も話せない状況だった。そんなミズカをエーフィは心配そうに見る。そして、ミズカはジュンサーにバイクでポケモンセンターまで送ってもらったのだった。

とりあえず、無事助かった二人。一件落着である。

ポケモンセンターに着くと、ミズカはすぐに手当をしてもらった。湿布を貼られ、痛み止めを処方された。そのあとは、ジュンサーに呼び出され、サトシと仲良く説教された。

さすがに今回は無謀だったとミズカもサトシも思う。1時間超のお説教を終え、二人は部屋へと戻った。

「ミズカ、足の調子は?」
「うん。痛み止め飲んだから、今は大丈夫。今日は安静にしてって言われたから、明日帰るよ。もう一週間ここにいるし、そろそろ戻らないと……」

ミズカは足を見つめる。本当は今日帰る予定だったが、歩けそうにない。さっきだって痛み止めを飲んだもののまともに歩けず、サトシに手伝ってもらった。

「帰って、変に思われないのか?」
「うーん。どうだろ? 階段から落ちたことにするよ。なんとか誤魔化す」

ポケモン世界の話をしたところで、いつも妄言にされる。おそらく誤魔化しても、なんとかなるだろうとミズカは思った。

そんなわけでミズカは翌日に帰った。
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