15章 プラスルとマイナン!

その頃、ミズカは足の痛みを我慢しながら歩いていた。右足で地面を踏む度、ズキンズキンと激痛が走る。とうとう限界を迎えてしまい、ミズカはその場に座り込んだ。

「ミズカ?」
「ごめんごめん!」

ミズカは立とうとするが、味わった事のない激痛が走って、力が入らずまた座り込んでしまった。それを、プラスルとマイナンは心配そうに見つめる。

「無茶するなよ」
「してないって! ――痛った~……」

意地を張るミズカだが、これ以上は歩けそうになかった。右足を押さえる。サトシはミズカの右足を見た。足首が酷く腫れていた。

「ここで、助けが来るの待とうぜ? そんなんじゃ、歩けないだろ?」
「でも……」
「いいから無茶するなって! ここで助けを待ってようぜ!」

ミズカは諦めて頷いた。ミズカはサトシに肩を貸してもらい、近くの木に寄っかかる。きっとタケシ達が助けに来てくれる。そう思い、待つことにした。

しかし、そんなすぐに見つけてもらえるはずもない。次第に日が沈み始めた。

「あ~、もう今日は野宿決定かも……」

ミズカはハルカの真似をしながら声を上げた。

「ハルカの真似してる場合じゃないぜ……?」
「たしかに……」

ミズカとサトシは、薄汚れた一つの看板に目をやる。

『凶暴ポケモン注意……』

ここからだと文字は見えないのだが、サトシがさっき確認してきた。

「ここ、かなり危険な所なんだ。こりゃ、助けが来る前にお陀仏かも……」
「変な事言うなよ! チコリータがいるだろ!」

サトシはミズカがチコリータをオーキド研究所に置いて来た事を知らない。

「残念でした……。チコリータは今、オーキド研究所よ……」

ミズカは遠い目で口角を上げる。サトシの顔色は変わった。サトシもスバメは持っていた。しかし、それは一時間前の事……。スバメにタケシ達にここの場所を伝えるよう頼んだのだ。まだ看板に気づいていなかったときの話だ。

「てことは……」
「あたし達には今、手持ちは一匹もいません!」

ミズカとサトシは、同時にため息をつく。二人には手持ちがいないことになる。

「あーあ。プラスル、マイナン。ここは危ないから早く帰ったほうがいいよ……。あたし達の力じゃもう助けられないから……」

ミズカは二匹に話しかける。サトシも「そうだな」と頷いた。

「プラ!」
「マイ!」

しかし、二匹は首を横に振る。さらに二匹はミズカの服を引っ張る。何か訴えているように見えた。

「もしかして……、プラスルとマイナンはミズカのポケモンになりたいんじゃないか?」
「え……? そうなの?」

サトシがピンと来て言う。ミズカは目をパチクリさせると、二匹は頷いた。サトシはそれを見て笑みを漏らす。

「ミズカは電気タイプのポケモンと相性がいいからな!」
「そういえば……、そうだっけ?」

ミズカは苦笑する。確かに、やたらと電気タイプに好かれる。ピチューや、サトシのピカチュウ。チヒロのメリープや、牧場のメリープにモココ……。それでけではない。旅のときに、電気タイプのポケモンと出会うと、必ず仲良くなれた。

「でも、いいの? あたしのポケモンになっても……?」

二匹は深く頷いて笑う。

「そっか……」

嬉しくなりながら、ミズカはリュックからモンスターボールを二つ出した。そして、軽くモンスターボールを二匹に当てる。二匹が入ったモンスターボールはミズカの手の中に収まった。

「プラスルとマイナンゲット! それじゃ、出てきてプラスル! マイナン!」

ミズカは二匹をすぐにモンスターボールから出した。

「これからよろしくね!」
「プラ!」
「マイ!」

こうして、新たな仲間が二匹増えたのだった。とはいえ、これで解決したわけではない。助かるかどうかはまた別の話だった。
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