13章 さようなら。また会う日まで!
お祭り騒ぎだったジョウトリーグが終わった。サトシはベスト8、シゲルはそのサトシに負けてベスト16で終わった。サトシとシゲルは決勝リーグ一回戦で対戦となったのである。
ミズカは手に汗握るバトルの数々に興奮していたのだが、すぐにポケモン世界へ行くことは叶わなかった。
「ちゃんと片付けなさいよ」
「うーん」
母親に言われて、ミズカは適当に返事をした。すぐそこには畳まれたダンボールがいくつも置いてある。ミズカはそのダンボールの横に置いてあるビニール袋の塊に手を伸ばした。
あと一時間でポケモンのアニメが始まる。サトシたちに会いに行きたい反面、なかなか行けない理由があった。
ミズカは1ヶ月後には違うところに引っ越している。母親からはいらないものは早めにまとめておいてくれとお達しされていた。ダンボールも早すぎるのではないかとミズカは思ったが、母親はせっかちなところがある。
とはいえ、母親の気持ちもわからなくはない。まだ家にはいるが、両親は離婚した。離婚届なるものもミズカが見ることはなかったが、ある日、母から「今日離婚した」と告げられた。実にあっさり。家族というのは、紙切れ一枚で他人になることをミズカは知った。
まだ家には父がいる。紙一枚で他人になった父。でも、いつも通りの父。夜だって、やっぱり遅い。そもそも紙切れを出すより、随分前から両親の関係は終わっていたのだ。今更紙一枚で変わることでもない。
ゴールの見えない片付けを前にため息をつきそうになった。ため息を飲み込んで、いらないものを袋に詰め込む。
一時間頑張って、ポケモンのアニメが始まった。ミズカは持っていた袋を端にやり、テレビを見つめた。
「お姉ちゃん、顔色悪いよ?」
ミズカの顔色を見て、タカナオは首を傾げた。それもそのはず、カスミが姉達の代わりにハナダジムのジムリーダーにならなければならなくなったのだ。理由は単純で、カスミの姉たちが世界一周旅行をするから。
つまり、サトシとはもう旅をしないということになる。サトシとカスミの気持ちを知ってるミズカには辛いものがあったし、何より、もうカスミと旅ができないことが悲しくなった。
最近は、片付けやら親や弟への気疲れから、ポケモン世界には全然行っていなかった。わかっていた別れもあれば、突然の別れもあるのだとミズカは知った。
何も重ならなくても良いじゃないかとミズカは思ったが、そう文句を言っている場合でもない。このままカスミと会わないで、さよならするのは嫌だ。
深夜、もう少しで別れる家からポケモン世界へ向かった。
サトシと別れたカスミ。いつかサトシが壊し、直って返ってきた自転車に漕ぎながら、あることを考えていた。
「……ミズカともう会えないのかな」
呟く言葉。ミズカが別の世界にも生活があることはわかっている。珍しく全然顔を出さない彼女はいつこちらに来るのだろう。サトシと旅をしていないことを知ったら、少しは寂しがってくれるだろうか。
「チョゲ?」
自転車の籠に乗っていたトゲピーが心配そうに見つめる。あまり速く漕ぎたくない。最初こそ快調に飛ばしていたが、どんどん、皆と一緒に過ごした旅が遠ざかっていく気がする。
そのとき、カスミの横をトラックが通り過ぎた。通り過ぎたと思ったら、何十メートルか先で止まる。
トラックのドアが開き、人が出てきたと思ったら、それは自分の友人だった。カスミは思わず目を擦る。
「おじさん。ありがとうございます!」
長い黒髪にカチューシャの彼女は、紛れもなくミズカだ。カスミは呆然と立ち尽くし、トラックの運転手と会話するミズカを見つめた。
ミズカは手に汗握るバトルの数々に興奮していたのだが、すぐにポケモン世界へ行くことは叶わなかった。
「ちゃんと片付けなさいよ」
「うーん」
母親に言われて、ミズカは適当に返事をした。すぐそこには畳まれたダンボールがいくつも置いてある。ミズカはそのダンボールの横に置いてあるビニール袋の塊に手を伸ばした。
あと一時間でポケモンのアニメが始まる。サトシたちに会いに行きたい反面、なかなか行けない理由があった。
ミズカは1ヶ月後には違うところに引っ越している。母親からはいらないものは早めにまとめておいてくれとお達しされていた。ダンボールも早すぎるのではないかとミズカは思ったが、母親はせっかちなところがある。
とはいえ、母親の気持ちもわからなくはない。まだ家にはいるが、両親は離婚した。離婚届なるものもミズカが見ることはなかったが、ある日、母から「今日離婚した」と告げられた。実にあっさり。家族というのは、紙切れ一枚で他人になることをミズカは知った。
まだ家には父がいる。紙一枚で他人になった父。でも、いつも通りの父。夜だって、やっぱり遅い。そもそも紙切れを出すより、随分前から両親の関係は終わっていたのだ。今更紙一枚で変わることでもない。
ゴールの見えない片付けを前にため息をつきそうになった。ため息を飲み込んで、いらないものを袋に詰め込む。
一時間頑張って、ポケモンのアニメが始まった。ミズカは持っていた袋を端にやり、テレビを見つめた。
「お姉ちゃん、顔色悪いよ?」
ミズカの顔色を見て、タカナオは首を傾げた。それもそのはず、カスミが姉達の代わりにハナダジムのジムリーダーにならなければならなくなったのだ。理由は単純で、カスミの姉たちが世界一周旅行をするから。
つまり、サトシとはもう旅をしないということになる。サトシとカスミの気持ちを知ってるミズカには辛いものがあったし、何より、もうカスミと旅ができないことが悲しくなった。
最近は、片付けやら親や弟への気疲れから、ポケモン世界には全然行っていなかった。わかっていた別れもあれば、突然の別れもあるのだとミズカは知った。
何も重ならなくても良いじゃないかとミズカは思ったが、そう文句を言っている場合でもない。このままカスミと会わないで、さよならするのは嫌だ。
深夜、もう少しで別れる家からポケモン世界へ向かった。
サトシと別れたカスミ。いつかサトシが壊し、直って返ってきた自転車に漕ぎながら、あることを考えていた。
「……ミズカともう会えないのかな」
呟く言葉。ミズカが別の世界にも生活があることはわかっている。珍しく全然顔を出さない彼女はいつこちらに来るのだろう。サトシと旅をしていないことを知ったら、少しは寂しがってくれるだろうか。
「チョゲ?」
自転車の籠に乗っていたトゲピーが心配そうに見つめる。あまり速く漕ぎたくない。最初こそ快調に飛ばしていたが、どんどん、皆と一緒に過ごした旅が遠ざかっていく気がする。
そのとき、カスミの横をトラックが通り過ぎた。通り過ぎたと思ったら、何十メートルか先で止まる。
トラックのドアが開き、人が出てきたと思ったら、それは自分の友人だった。カスミは思わず目を擦る。
「おじさん。ありがとうございます!」
長い黒髪にカチューシャの彼女は、紛れもなくミズカだ。カスミは呆然と立ち尽くし、トラックの運転手と会話するミズカを見つめた。