13章 さようなら。また会う日まで!
「ところで、話が変わるが……、君には言っておくよ」
「……?」
「僕は、このリーグが終わったら、研究者になろうと思うんだ」
そのシゲルの言葉にミズカは目を見開いた。そんな事、まったく考えてもいないことだった。夢の話より重要な話。
「うそ……」
「本当さ。まだ、サトシには言ってないけどね」
「じゃあ、リーグが終わったら?」
「サトシにも言うつもりさ」
サトシにも言えていないことを言ったのは、次に彼女に会えるのはいつかわからないから。けれど、シゲルはまた彼女に会えたらと思う。
ミズカはそうとも知らずに、早々にシゲルの選んだ道を受け止める。
「そっか。それじゃ、サトシとバトルできるといいね!」
「そうだね」
ミズカはニコリと笑うと、手鏡から扉を出した。初めて見るがわかる。向こうの世界への通り道だ。どうやら帰るらしい。
ミズカはエーフィとチコリータをモンスターボールに戻すと、それをリュックにしまった。
「それじゃ、あたしはもとの世界に戻るね! リーグ、頑張って!」
「ありがとう」
ドアを開けると、ミズカは手を振って帰っていった。
シゲルはたった今、ミズカが立っていた場所を見つめる。最後、エーフィと目が合った。エーフィは少し安心しながらも、夢の話を聞いて驚いていたようだ。ミズカはいつ知るのだろうか。その夢が本当にあった出来事であると。
真実を知ったとき、果たしてどう思うのだろうか。
それを考えたとき、シゲルはミズカに思い出して欲しくないと思った。サトシに似た真っ直ぐな瞳。あの笑顔。胸が急に痛くなる。
もし思い出したら、シゲルの気持ちだけでない。その場にいたサトシの気持ちまで彼女はすぐにわかるだろう。そもそも、たった3歳のときでさえ、空気を読んで笑顔を作っていたのだから。
いずれ知らなきゃならないことだ。だが、今のシゲルにとっては、ミズカに最初の出会いのことを思い出されるのは怖い。自分がどんな気持ちで彼女と接していたのか。それを知られるのが堪らなく怖い。
事実、シゲルは君に顔をしかめたわけではないと嘘をついた。不審に思われたくなかったのもあるが、それだけではないことをシゲル自身はよく理解している。
それに、思い出したら、サトシとミズカはどうなるのか。きっと、今みたいな関係ではいられなくなるだろう。
「あのときの子がミズカじゃなければ……」
サトシとミズカがポケモンたちとじゃれ合っている姿を思い出す。あれが壊れるかもしれない。そうでないことを願いたい。
これは、どうしようもないことだ。
シゲルは複雑な気持ちを拭うように踵を返す。考えても仕方がない。そう自分に言い聞かせ、宿泊施設へ戻っていった。
「……?」
「僕は、このリーグが終わったら、研究者になろうと思うんだ」
そのシゲルの言葉にミズカは目を見開いた。そんな事、まったく考えてもいないことだった。夢の話より重要な話。
「うそ……」
「本当さ。まだ、サトシには言ってないけどね」
「じゃあ、リーグが終わったら?」
「サトシにも言うつもりさ」
サトシにも言えていないことを言ったのは、次に彼女に会えるのはいつかわからないから。けれど、シゲルはまた彼女に会えたらと思う。
ミズカはそうとも知らずに、早々にシゲルの選んだ道を受け止める。
「そっか。それじゃ、サトシとバトルできるといいね!」
「そうだね」
ミズカはニコリと笑うと、手鏡から扉を出した。初めて見るがわかる。向こうの世界への通り道だ。どうやら帰るらしい。
ミズカはエーフィとチコリータをモンスターボールに戻すと、それをリュックにしまった。
「それじゃ、あたしはもとの世界に戻るね! リーグ、頑張って!」
「ありがとう」
ドアを開けると、ミズカは手を振って帰っていった。
シゲルはたった今、ミズカが立っていた場所を見つめる。最後、エーフィと目が合った。エーフィは少し安心しながらも、夢の話を聞いて驚いていたようだ。ミズカはいつ知るのだろうか。その夢が本当にあった出来事であると。
真実を知ったとき、果たしてどう思うのだろうか。
それを考えたとき、シゲルはミズカに思い出して欲しくないと思った。サトシに似た真っ直ぐな瞳。あの笑顔。胸が急に痛くなる。
もし思い出したら、シゲルの気持ちだけでない。その場にいたサトシの気持ちまで彼女はすぐにわかるだろう。そもそも、たった3歳のときでさえ、空気を読んで笑顔を作っていたのだから。
いずれ知らなきゃならないことだ。だが、今のシゲルにとっては、ミズカに最初の出会いのことを思い出されるのは怖い。自分がどんな気持ちで彼女と接していたのか。それを知られるのが堪らなく怖い。
事実、シゲルは君に顔をしかめたわけではないと嘘をついた。不審に思われたくなかったのもあるが、それだけではないことをシゲル自身はよく理解している。
それに、思い出したら、サトシとミズカはどうなるのか。きっと、今みたいな関係ではいられなくなるだろう。
「あのときの子がミズカじゃなければ……」
サトシとミズカがポケモンたちとじゃれ合っている姿を思い出す。あれが壊れるかもしれない。そうでないことを願いたい。
これは、どうしようもないことだ。
シゲルは複雑な気持ちを拭うように踵を返す。考えても仕方がない。そう自分に言い聞かせ、宿泊施設へ戻っていった。