「エーフィ！　サイコキネシス！」
「フィー！」

踏ん張ったエーフィはすぐに切り替える。ミズカもそれを察して、すぐに指示を出した。ポケモンのスピードが上がったということは、トレーナーも指示出しの精度を上げなければならない。つまりミズカ自身もトレーナーとしてレベルが上がっていると言えた。

審判をするタケシは腕を組みながら、サイコキネシスで持ち上がるピカチュウを見て、ミズカやエーフィのレベルの上がり方に感心した。

「エーフィ、ピカチュウを地面に叩きつけて！！」
「フィ！」
「ピカチュウ！　負けるな、十万ボルト！！」
「ピーカヂューウ！！」

叩きつけられたピカチュウは、地面を跳ねたと同時に攻撃の体勢に入る。そして、エーフィに十万ボルトを放った。エーフィは避けきれずに、攻撃をくらう。

ピカチュウの十万ボルトは一回目よりも威力が高い。エーフィはブルブルブルと身体を振った。

「ピカチュウ！　電光石火！」
「ピッカ！」

電光石火が向かうピカチュウ。エーフィは十万ボルトを食らったあとで、足元がおぼつかず、ふっ飛ばされる。が、流れに身を任せるようにくるりと宙返りをして、体勢を整えた。

「エーフィ！　もう一度、サイコキネシスよ！」
「フィ！！」

地面に軽やかに降り立つと同時に、今度はピカチュウの身体が宙に浮く。

「ピ～カ～！」
「ピカチュウ！　なんとか、サイコキネシスと解くんだ！」

無茶苦茶なサトシの指示に、ピカチュウもなんとか答えようとするが、エーフィも本気だ。逃すまいと集中力を高めている。

「エーフィ！　もう一度地面に叩きつけて！」
「ピ～カ～ヂュ～ウ！！！」

ミズカが指示したと同時に、ピカチュウは抜け出すために雷を放った。放ったあとに、ピカチュウは地面叩きつけられる。エーフィは不意をつかれ、ピカチュウの雷をくらってしまった。

結果、エーフィもピカチュウも倒れた。

「ピカチュウ、エーフィ！　戦闘不能、よって引き分け！」

タケシの号令にミズカは力を抜いた。もう少しだったのになぁと悔しくなる。しかし、あのピカチュウにここまで互角に戦えたエーフィが凄いとも思っていた。

「エーフィ、お疲れ様。ボールに戻って！」

ミズカはエーフィの身体を撫でた。エーフィも満足しているようで口角を上げて頷くと、ボールの中へ入っていった。ミズカはその足でサトシとピカチュウのもとへ行く。

「引き分けだね……」
「あぁ……」
「でも、楽しかった！　次は負けないよ！」
「俺だって！」

二人とも楽しかった。そのことに違いはない。勝敗はつかなかったが、次はきっと、とお互いに思っていた。

「さて、あたしはもとの世界に戻るね！　リーグ、頑張ってよ！」
「もちろん！」
「じゃあね！」

ミズカはドアを出して、もとの世界に戻って行ったのだった。