12章 エーフィvsピカチュウ

サトシはスプーンを持つと、カスミと目が合わないように黙々とご飯を食べる。

「ごちそうさま!」

そんなサトシに助け船を出したのはミズカだった。明らかに動揺するサトシを見て、助けずにはいられなくなった。

「あんた、いつその量を食べたのよ!」

カスミは、サトシからミズカに視点を変える。サトシはホッとした。

「いつって、今だけど?」
「はぁ、これだからお子ちゃまは」
「お子ちゃまで悪かったね。どうせ恋もしてない女ですよ」

べーっと舌を出し、食器をまとめる。

「タケシ、川ってどこ?」
「そこを真っ直ぐだ」
「わかった!」

ミズカはそう言って立ち上がり、皿を洗いに行った。こうすれば、きっとサトシも続くだろうと思った。今は一刻もここを離れたいはずだ。

「俺もごちそうさま!」

サトシは急いで食べ終わると、ミズカを追いかけて行った。

「ねぇ、なんかサトシの様子おかしくない?」
「そうだな……」

カスミに聞かれる。タケシは何故だかわかっていたが、何も言わなかった。カスミも鈍感なんだろうなぁとタケシは心の中で思う。そして、タケシは心の中でミズカが解決してくれることを願った。

一方、ミズカと、逃げるようにミズカを追ってきたサトシは川で皿を洗っていた。黙々と作業するミズカは、「んっ」とサトシの皿も貰う。サトシもそこは素直にミズカに皿を渡した。

「あのさ……」

ミズカが洗う泡立った皿を見ながら、サトシが口を開く。ミズカは作業を止めることはない。サトシを見ることもなく、

「カスミのことでしょ」

と、ズバリ言ってきた。サトシは苦笑する。そして、仰向けになった。

「これってやっぱり……、恋だよな?」

サトシは自身に問いかけるように言った。それでも確信に近いのはきっとミズカとは違うから。ミズカは気の合う友達。似ていると言われることから、少し兄弟のような感覚もあった。だからこそ、こうやってミズカに打ち明けられる。

じゃあ、今まで会った女の子と、カスミは同じなのかと言うと、それとも違う。何度かからかわれたことはあるが、それでドギマギすることはよくあった。 
3/7ページ
スキ