11章 ポケモンダンス団と別れ道

その夜……、

「ミズカのピチュー凄かったよな!」
「ホント! あんなダンスが得意だったなんてね!」

サトシとカスミの言葉にピチューは顔を少し赤らめた。ピカチュウもピカチュウに笑顔で話しかけている。

「ピチューは、ダンス好きなの?」

カスミが聞く。ピチューは頷いた。ミズカはそんなピチューが見てられなかった。

――ピチュー……ここに残りたいのかな……。

そんな考えが、頭に過ぎる。ミズカはダンス団に入れるつもりはなかった。しかし、ピチューのあんな楽しそうな表情はバトルをしても見られなかった。

ピチューはロケット団の研究材料だった。どんな研究かはちゃんとは知らないが、ピチューがバトルが苦手な身体にされたことは明白だった。スピードが上がらない。

ともすると、自分がバトルを好きだから、ピチューはバトルをしているだけかもしれない。バトルが好きだったとしても、ダンスの方が好きなのははっきりわかる。

それでも、ミズカはピチューと離れるのが嫌だった。自由にさせたいという思いとは裏腹に、別れたくないという思いが強烈にミズカを支配している。

「ズカ……? ミズカ!?」

ミズカはふと我に返った。

「え? 何?」
「今の話、聞いてなかったの?」

カスミが聞いた。

「え……、あ! ごめん……」
「あんた自分のポケモンの話でしょ! ちゃんと聞いてなさいよ!」
「ごめん……。さっきのピチューのダンスを思い出してたの」
「まったく……。で、あんたはどうしたいのよ?」
「へ?」

ミズカはまったくカスミの話しについていけない。呆れた表情でカスミは続ける。

「ダンス団よ! どうするの?」
「え……」

ミズカは一瞬言葉が詰まった。どうするのか。ピチューを見る。もし入団させないと言ったら、ピチューはどんな表情をするのだろう。悲しい顔をするだろうか。それとも自分といたいからと納得してくれるだろうか。

いずれも、当事者に聞かないことにはわからない。


「ピ、ピチューはどうしたい?」

ミズカは感情を押し殺しながら、恐る恐るピチューに聞いた。

「ピチュー!!」

ピチューは悩む事なく答えた。その場で宙返りをしている。答えはYESだ。ミズカは自分の気持ちを飲み込む。

「そっか。そうだよね……。得意だし上手だもんね……」
「ミズカ……?」

カスミが顔を覗かせた。ピチューとの別れが嫌だと悟られたようだ。ミズカは息を吸い込む。そして、無理矢理に笑ってみせた。

「ピチュー! ダンス団に入団しようか」
「ピチュー!?」

寂しそうにいうミズカに気づかず、ピチューは許してもらった瞬間、目を輝かせた。とても嬉しいらしい。これが、ピチューの答え。ピチューのやりたいこと。

5/6ページ
スキ