10章 幽霊ハナのお願い

その夜、ミズカは夢を見た。

――あれ……? ここは……?

辺りには木々が広がっていた。森なのか、林なのか。周りの木々はいつもより大きく見える。

――なんでだろう……。

そんな木々を見て、ミズカは不思議に思う。そこへ男の子二人がミズカの前に来た。その男の子も大きく見える。キャップをかぶった男の子が、

「君の名前は……?」

と聞いてきた。顔は見えない。ミズカは得体のしれない怖さを感じた。

「ミ……ジュカ……」

夢の中の自分が答える。

――あれ? なんであたしこんな口調なわけ?

ミズカは普通に名前を言ったつもりだった。しかし、明らかに、舌っ足らずである。たとえば、幼い子が言葉を覚えたてたような言葉遣い。

そこで、周りの身長が高い謎が解けた。ミズカは自分が幼い子となって夢を見ているのだ。そんなミズカは、なぜだかわからないが、半泣き状態だった。

「―――、泣かしてどうするんだい?」

もう一人の紫の服の男の子が言った。ミズカは名前の部分が聞こえなかった。キャップの子と同い年なのだろうか、かなりしっかりした様子だった。

紫の子の顔もミズカは捉えられなかった。

「別に、泣かすつもりは……」

戸惑うキャップの子はオドオドしている。それから、ミズカは徐々にその二人に慣れて遊んでいた。まあ、一緒に遊んでいるのはキャップの子だけだったが……。

ミズカは自身が慣れて遊びに楽しみながらも、モヤモヤしていた。キャップの子も、紫の子も楽しそうではない。笑っているが、自分に気を遣っているように見える上、何を察知しているのか胸がチクッと痛む。どこかで感じた痛みだった。

「おーい! ミズカ! 来いよ!」

痛みについて考えていると、キャップの子がミズカを呼んだ。その隣には紫の子。そして、何故か自分の父親がいた。

「ミズカ、―――、―――君! 写真を撮ろう」

父親は言った。しかし、また自分の名前しか聞こえなかった。父親はすばやく、三人を並べると、写真を撮った。

<<カシャ!>>

そのカメラの音がなった瞬間、違う雑音が聞こえた。
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