10章 幽霊ハナのお願い

「ガウガウ……」

ガーディは首を横に振る。ハナが会いに来てくれたこと、それだけでガーディは嬉しくなった。しかし、気が抜けたのか、ガーディは倒れた。ミズカ達はびっくりする。その拍子に、ハナはミズカの体から離れた。

「早くポケモンセンターへ!」

タケシの声に頷くと、ミズカは衰弱ガーディを抱き上げる。痩せ細った身体。ミズカでも軽々と持ち上げられた。そしてミズカ達は、ハナの案内で急いでポケモンセンターへと向った。

「ジョーイさんこの子をよろしくお願いします!」
「わかりました」

ジョーイは、差し出されたガーディが、公園のガーディだとすぐわかった様子だった。何も事情を聞くことなく、すぐにガーディを治療室へと運ぶ。

ジョーイから「大丈夫」という言葉もなかった。それだけでミズカ達にはどれだけガーディが危ない状態なのかがわかる。しばらく沈黙が続いた。この沈黙はジョーイが治療室へ出てくるまで続いた。

どのくらい経っただろうか、ジョーイは治療室から深刻な顔で出てきた。ミズカ達は待合の席を立つ。何とも言えぬ緊張感が彼らを襲った。それを察しながら、ジョーイはゆっくりと口を開く。

「残念だけど……、この子は明日の朝が峠よ」

ジョーイの震える言葉。ミズカ達は頭が真っ白になった。

――ガーディが明日峠を迎える? 死ぬってこと?

「そんな……、どうにかならないんですか!」

ミズカは両手でジョーイさんの胸ぐらを掴む。どうにかならないことなど、ミズカにはわかっている。それでも、聞かずにはいられなかった。

サトシ達もミズカの気持ちをわかって、黙って俯いている。

「ごめんなさい、どうにもならないわ……」

ジョーイは、医療従事者としてキッパリ言った。ミズカは力が抜け、ジョーイさんの胸ぐらを掴んだ両手をゆっくり離す。

――ポケモンが死ぬなんて考えた事なかった……。

ミズカは生まれてここまで身近な人が亡くなったという経験がなかった。だから、ポケモンが亡くなることなど、夢にも思わなかったのだ。

後ろを向けば、目を逸らした三人がいる。カスミはトゲピーを強く抱きしめていた。

「ガーディは私のせいで……」

ハナが呟く。救われない状況に、やるせなくなる。それでも、とミズカは首を横に振る。

「違うよ! ハナは悪くない!」
「どうしたんだよ。急に……」

ハナの声が聞こえないサトシ達は当然ビックリする。ハナの方を向く。事故だった。ハナのせいじゃない。それははっきり本人に言いたかった。

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