10章 幽霊ハナのお願い

「いいんですか?」
「うん」

ミズカは真剣になって頷く。一刻も早く、ポケモンセンターに連れて行かなければ。ハナも同じ気持ち……、いや、もっと強い気持ちだった。

ミズカの身体を何度も借りるのはしのびなかったが、背に腹は代えられない。ハナはミズカの身体の中に入った。

「ガーディ……」

ハナは優しく呼んだ。声はミズカだが、声色……声の出し方が違う。思ったとおり、ガーディはすぐにハナだとわかった。警戒を解き、ハナに擦り寄る。

「ごめんね……。ずっと待たせちゃったね……」
「ガウ……」

ハナはガーディの顎を撫でた。ガーディはクーンと鳴く。サトシ達はこの光景が辛くて見ていられなかった。思わず、泣きそうになるのを堪える。

「あの日……。ここで待っててってお願いしたあの日……。不注意で私は事故に遭ってしまったの……。だから、ガーディがずっと待ってくれていたの知っていたのに、迎えに来ることができなかった……。本当にごめんね……」

震えた声。ガーディのおでこに、ハナは自分のおでこをくっつけた。いつもハナが可愛がるときにやってくれる行動。ガーディはやっと理解した。

ここにいるのはハナであり、ハナではない。そして、ハナがどんな思いでここまで来てくれたのか。見ず知らずの人を頼ってきてくれたのか。

ガーディだって変に思わなかったわけではない。ハナに何かあったことは感じていた。だから、心配で待っていた。


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