10章 幽霊ハナのお願い

「この公園の噴水の前にガーディがいるんだって」

サトシ達に説明しながらミズカは進む。すると、ハナの言う通り、噴水があり、その前にはガーディがいた。3週間同じ場所におり、口につけているとしたら噴水の水だろうか。ガーディは痩せ細っていた。

ミズカ達はガーディのところへ行った。

「ね、ねぇ、ガーディ」

ミズカはガーディに話しかけた。

「ガウ!」

ガーディはかなり警戒していた。牙をむき出している。手を伸ばせば、噛みつかれそうだ。ミズカは手を上げ、何もしない素振り見せる。少しずつ近づき、そして、しゃがんだ。

「あなたに少し話したい事があるの。いいかな?」

ミズカは優しく柔らかく言った。ガーディは警戒しながらも、牙をしまう。ミズカの話を聞いてくれるらしい。

そんなガーディを前に、ミズカはごくりと息を呑む。これから、残酷なことを話す。ガーディはどんな反応をするのだろう。

急に怖くなる。けれど、言わない限り、きっとガーディはこのままだ。ミズカは少し震えた声で口を開いた。

「実は、あなたの飼い主のハナさんは……、もう戻って来ないの。もう死んじゃったのよ……」

ガーディの顔は見られなかった。俯く。しかし、その言葉を発しても、ガーディが信じることはなかった。

「ガウ!!」

と、最初よりも大きな声で吠えられる。もっと警戒してしまったようだ。もしかすると、もう町の人が散々やっていることなのかもしれない。

「どうすんのミズカ……、全然信じてないわよ?」
「無理もないだろ……。ハナは見えていないしな……」

カスミとタケシの言葉に、ミズカは頭の中でどうすべきかと考える。もし他の人もやっていて、この状態だとすると、このまま話しても噛みつかれるのがオチだろう。そんな力はなくても、きっと全力で追い返そうとする。

「ガーディ……」

ミズカの隣で見ていたハナは、心配そうに見つめていた。ミズカは、ハッと気がつく。ここに、上手く伝えられそうな方法があるではないか。

「ハナ……。ハナがもう一度あたしの身体に入って、ガーディと話したほうがいいと思う」

ハナを見つめると、ハナは目を見開く。さっき、ハナがミズカの身体に入ったとき、サトシ達はすぐにミズカでないことに気づいた。

だったら、逆もしかり。ハナのことをよく知っているガーディがハナに気づかないわけがない。
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