10章 幽霊ハナのお願い

「なんでミズカの身体を借りたんだ?」

サトシが聞いた。まともに話してくれる人間がいて安心したのか、ハナは嬉しそうにした。

「ミズカさんは私のことが見えたからです。だから、体をかりました。そして、体をかりた理由と言うのは……」

そして、ハナは説明し始めた。

「私、3週間ほど前、不注意で交通事故に遭ったんです。事故にあった日、昔から一緒のガーディに飲み物を買ってくるからそこで待っていてと言ったきり、戻れなくなってしまって……。ガーディ、あの日以来ずっと私を待っているんです。周りの人に言われてもずっとその場を動かなくて……」
「そうだったんだ……」
「それで、なんとか協力してもらえませんか? ガーディに私はもういないって事を伝えるだけで良いんです」

ハナは必死だった。その場にずっといるということは、ガーディは何も飲まず食わずのはずだ。三人は顔を見合わせて力強く頷いた。

「あたしは良いわよ!」

カスミが言った。

「俺もいいぜ!」
「俺もだ!」

サトシもタケシも続く。その返事にハナの表情に花が咲いた。

「ありがとうございます! それでは、案内します。ミズカさんについてきてもらうようにしますね。お願いします!」

ハナはそう言うと、ミズカの体から抜けた。ミズカは急に身体が軽くなるのを感じた。少し宙に浮いた感覚があって、フラッとする。

ハナに身体を貸していたときもミズカには意識があった。これから、何をしに行くかはわかっているらしい。少し先に進んだハナを見て、頷く。

「そういうことらしいね」

もとに戻ったことを確認して、サトシたちに言う。当然、サトシたちはいつ戻ったかは知らない。

「あれ? ハナは?」

サトシが聞く。すぐにミズカ本人なのはわかった。

「え? 隣にいるよ。さ、行こ!」
 
ミズカは勝手に歩き始めた。ハナが案内してくれているのがわかり、サトシ達もそれについて行く。

しばらくは、暗くて不気味な道であったが、次第に不気味さは薄れ、ハナの住んでいた明るい町に入った。

「なんか一気に明るくなったわね! 良かった!」
「カスミ、いい加減歩きにくい」

カスミがホッと息を撫で下ろしたのを確認してミズカが突っ込む。カスミはまたミズカの腕に絡みつきながら歩いていたようだ。

ミズカはサトシの腕にくっつけばいいのに、と言ってやりたかったが、カスミに殴られるのでやめておいた。

「あはは、ごめんごめん……」

カスミは苦笑しながらミズカを解放した。ミズカは軽くのびをする。

「この先に噴水がある公園があります。その噴水の前にガーディはいるはずです!」

ハナが案内する。ミズカは頷いた。それにしても、町の人は誰一人としてハナが見えないらしい。ハナの霊体があるのに気づかず、そのまま突っ切る人がいて、ミズカはやるせなくなった。

公園は、五分くらい歩いたところにあった。

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