with横山
深夜というよりも、明け方に近い時間。
飲み散らかした缶と空き袋の海の中で、志摩はいつの間にか寝落ちていた。
「ふふ、寝ちゃったかぁ」
伊吹は立ち上がり、自身の上着をそっと志摩の肩にかける。
それから起こさないように優しく髪を撫でた。
「ほんっと無防備できゅるきゅる」
志摩を見つめる瞳は誰がどうみてもわかるほどに愛おしいと伝えている。
その様子をぼんやり眺めながら、横山は缶ビールを片手に問いかけた。
「伊吹くん」
「んー?」
「付き合うって、どんな感じ?」
「えー、聞いちゃう?惚気るよ?」
「いいよ、どうせ暇だし」
伊吹は口元に笑みを残したまま志摩から離れ、ゆっくりと先ほどの場所に腰を落ち着ける。
そして、またひとつ新しい缶を開けた。
「んふふ、なんかね、よく回る口の小言とか意地張るとことか全部許せんの。むしろそれすらビッグラブ。めんどくさいとこもまとめて“かわいい”になんのヤバくね、横山ちゃん」
嬉々として語る伊吹に横山は感心したように頷く。
恋愛漫画を描いている割に、自分にはそんな相手がいないので単純に勉強になると思っていた。
「志摩の声とか、匂いとか、表情とか全部頭ん中に残んの。事件とかでたまに死にそうになると、マジでそればっか思い出す…志摩のために生きなきゃなあって、俺は志摩の隣にいれたらそれでいいんだ」
「…いいなぁ」
惚気を耳にして、横山が思わずこぼした声は羨望よりも温かさに近かった。
伊吹はその響きに笑みを深め、そのまま喉を鳴らしてビールを流し込んだ。
「なー、これ漫画のネタに使ってもいい?」
「もちのろん!俺のかっこよさマシマシで頼むわ」
「はは、りょーかい。イケメン警官で描いとく」
「うぇーい!あと、仕事もできる完璧魔神で!」
「欲張りか」
志摩の穏やかな寝息が部屋に流れるなか、伊吹と横山の会話は絶えることなく続いた。
二人は夜明けの空が少しずつ色を変えていくのを感じながら、楽しい余韻に浸っていた。
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