with横山
ドアを開けると、男が二人立っていた。
ひとりは落ち着いた雰囲気の、少し堅そうな男。
もう一人は、笑っているのにどこか鋭い目をした、気さくそうな男。
「警察です。少しお話しよろしいですか」
「…ああ、事件の件ですよね。管理人さんから聞きました」
横山は目をこすりながら頷いた。
寝不足のせいで頭がぼんやりしていたけど、警察官が来たとあれば無視はできない。
昨夜、マンションの裏手で何かがあったらしい。
「どうぞ。狭い部屋ですけど」
「…お兄さん漫画家なの?」
靴をそろえながら部屋を見回した伊吹が、ふとテーブルの上に散らばる紙に目を留めた。
人物が動き、表情があり、台詞が手書きで走っている。
「…え?」
ネームに視線を向けたまま、伊吹は何気なく尋ねる。
だけど、その目は少しだけきらきらしていた。
「なんかこれ、プロっぽいなーと思って。いや、俺ちょっと好きなやつあってさ〜、この間もなんか、新人コーナーの…」
「伊吹、仕事中」
志摩のひと声で、空気が少し戻る。
伊吹は仕方なく口を噤み、捜査の内容に戻った。
「えっと、それじゃ、昨夜の二十三時ごろからのご様子を…」
聴取はスムーズに終わったが、伊吹は帰り際まで部屋のネームをちらちら見ていた。
なぜかその表紙の落書きが、どこかで見たような気がしてならなかった。
その帰り道、志摩は前を見ながらぽつりと口を開いた。
「…さっきのネーム」
「ん?」
「お前がこの前ファンレター送ったって言ってた新人の名前だったな」
「え、ちょ、待って、待って、待って……え?」
「偶然だけど、絵も同じタッチだったな。お前、帰って確認してみたら?」
「っやば…え、俺、あの人の部屋にいたの?!うわ、漫画読ませてとか言えばよかったぁ!!」
志摩は横でため息をつきながらも、伊吹のテンションの高さにどこか微笑ましさを感じていた。
「…次また事情聴取になったらな」
「志摩ちゃん、理由作ってでもまた行こう」
「それもう完全に私用だろ」
「違ぇよ、正義だよ、正義の再会だよ!」
伊吹はにやにやが止まらず、ご機嫌に鼻歌を繰り広げる。
志摩は呆れながら、事件の解決と相棒の幸せを願っていた。
