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ノーマル


隊長に告白をして志摩に手錠をかけられたのはいつだったか。
俺は昔から、好きなものは好き、いいと思ったらすぐ口に出す性分だ。

なのに、どうも最近おかしい。
今も変わらずみんなに好意を伝えられるのに、たったひとり、志摩にだけは言えない。

「志摩ちゃん」
「ん?」
「もやもやすんの」
「ふんわりしすぎ」

勤務終わり、たまたまみんな出払っていて2人きりの分駐所。
ロッカーにもたれて、こっちを見るその視線は優しくて、俺の胸をじんわりと焼く。
そして、仕事以外でもちゃんと話を聞いてくれることが嬉しくて仕方なかった。

「俺さ、好きと思ったら伝えてくスタンスじゃん?」
「ことあるごとにきゅるきゅるきゅるきゅる尻尾振ってるもんな」
「尻尾ない!」
「で?話が逸れてんだよ、また」
「あ!そうだそうだ!でね!なのに好きって言えない子が一人だけいんの!これ何?」
「知らん」
「えぇ〜志摩ちゃ〜ん」

それきり、志摩はロッカーを閉めてお先と出ていった。
残された俺はその場に立ち尽くすしかなくて、頭を悩ませていたら久々の九ちゃん登場。

「あれ、伊吹さんだけですか?」
「そうなのだからちょっと相談のってよ」
「えぇ…」

あからさまに嫌な顔をされたけど、腕を引いてソファーに座らせる。
渋々ではあるが、それでなんですかと聞いてくれたので一気に話した。

「俺さ、みんなには好きって言えるのに志摩にだけ言えなくて。あ!嫌いじゃないよ?でも目合わせると苦しくなって胸のあたりぎゅーってなんの…これ、病気かな」

仮にも自分より年上の先輩が真面目に聞いてくるので、内心ちょっと引いていた。
同性だからなんて偏見ではなく、付き合っていないどころか自覚さえしていなかったことに驚いた。

「…恋、って知ってますか」
「九ちゃん馬鹿にしてる?」
「至って真剣です」
「恋くらい知ってるよ!もうっ」
「…じゃあ理解できますよね」
「…何が?」

全く察してもらえないので、少し疲れてため息を吐いた。
下手なことを言ったら志摩さんに怒られるだろうか。

「伊吹さんの症状は病気ではなく恋です。好きな人にだけ緊張してうまく言えなくなるのは当たり前です」
「いやいや志摩ちゃん男だよ?」
「伊吹さんがそんなこと気にする人だったとは…では、私がいただいてもいいですか」
「はぁ"?」

本当にチンピラだなと失礼なことを思ったが、思われても仕方のない顔をしていると思う。
嫉妬でこの顔ってどこの犯罪者ですか。

「冗談です。でも、今のでわかったでしょう?あなた志摩さんを自分のものにしたいんですよ。あ、相棒だからなんて馬鹿みたいなこと言わないでくださいね。そもそもほかのチームの相棒は伊吹さんみたいに執着したり目が合うと苦しいなんて言いませんから」
「そう、なの…?」
「当たり前です。だいたい、今だから言いますけど私が機捜にいた頃から距離感おかしいですよ」
「えぇ…」

九ちゃんのよく回る口は健在だった。
頭の中でぐるぐる言葉が回る。

志摩が、すき。
俺は、志摩に恋してる。

名前を自覚した瞬間、全身が熱くなり、胸のもやもやが甘くて苦い痛みに変わる。
その夜、ひとりの部屋で何気なく呟いてみた。

「…志摩…志摩ちゃん、しーま、しぃま…」

声にした瞬間、心臓が煩く音を立てる。
明日からどんな顔をして志摩に会えばいいんだろうと、俺は布団の中で悶え転げ回る夜を過ごした。
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