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ノーマル


微かに射し込む朝の光に目を覚ましたが、目覚めは良くなかった。
できることなら昨日に戻りたいと願う。

誕生日プレゼントはおれ、なんて。
酔っていたとはいえどうかしていた。

布団の中に頭まで籠り、ぎゅっと目を閉じる。
身体中に残る名残と、結かれたままの赤いリボン。
昨晩のことが鮮明に思い出されて熱くなった。

「志摩、起きてるの?」

恋人の勘の良さが今は憎い。
声が近づいてきて息をひそめたが、起きているのはバレているらしく、布団越しにぽふぽふされた。

「志摩ちゃん」

目だけを布団から覗かせると、伊吹はすぐ目の前にいた。
少し困ったような心配しているような寂しいような瞳だった。

「身体痛い?」
「…ちょっと」
「昨日のこと後悔してる?」
「…すごく」

冷静になればなるほど、情けなくて、恥ずかしくて。
プレゼントの価値などないのに傲慢だったと思った。

「俺、めちゃくちゃ嬉しかったよ。すごく可愛くて、幸せな日だったなぁ」

言い聞かせるようにゆっくりと話す伊吹は本当に嬉しそうだった。
おれは布団に沈んだまま、言葉を探した。 

「…ゃだ、ちゃんと、プレゼントあげるから…なに、ほしい?」

昨日の余韻もあって声は少し枯れていた。
伊吹はふわりと笑って、それから唯一布団から出ている頭を撫でてくる。

「志摩がほしい」

茶化しているのか、揶揄っているのか、優しさの誤魔化しか。
布団から睨むみたいに見上げたけど、伊吹は真面目な顔をしていた。

「誕生日だけじゃなくて、志摩がほしい。ずっと…これから先の志摩も、ぜんぶ、俺にちょうだい」

そんなプロポーズみたいなことを言われて言葉が出てこない。
こんなに誠実な恋人に、何もないおれは何をどう返せるのだろう。

「しーま」
「…ずるい」
「ふふ、だって志摩の全部が欲しい」

ほんの少し布団から手を出して、伊吹の手を握ってみる。
それだけでふわりと微笑んでくれるから、胸が締め付けられた。

「今日も、明日も、これからも。志摩がほしい」

布団の中で、熱くなる頬を押さえながら、小さく笑った。
ずっと、傍にいたいと思った。
でも、やっぱり形がないのは寂しいから、今度指輪でもプレゼントしちゃおうかなと企んだ。
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