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ノーマル

志摩が捜査一課に駆り出されて1週間、やっと事件が解決したらしい。
明日からまた志摩と走れると思うとわくわくが止まらない。
そろそろ寝ようと思い電気を消すと同時にインターホンが音を出した。

「誰だよこんな時間に…え、志摩?」

ドアスコープに映るのは、ふわふわと特徴のある髪の毛。
思いもよらない人物に驚いて慌てて解錠する。

「いぅき〜…っ」
「うお、志摩顔真っ赤!飲みすぎだって」

ふらふらと俺にもたれかかるように倒れ込んだ志摩は、すっかりできあがっていた。
にこにこの呂律の回らない状態でアルコールの匂いも強い。

「んん…だって、きょう、かりやが、かいけつのおいわいだからのめって、、がんばった…またきそーでいぅきといっしょ、うれしい…」

溶けてしまいそうな目で見上げられる。
あまりのきゅるさに胸をぎゅっと掴まれたような気分になった。

「志摩?ちょ、なにしてんの?」

気づけば、俺の膝の上に頭をぽすんと乗せていた。
その上猫みたいに擦り寄ってくる。

「いぅき、さみしかった…ちゅーして」
「んもー志摩ちゃん可愛すぎ…っ」
「ちゅーはぁ…?」
「ちゅーは無しだよ、志摩ちゃんが酔ってないときに言ってくれたらね」
「ゃ、ぃうき、なんでいじわるすぅの…」

恋人でもないのによくないんじゃないかと思ったが、涙を浮かべる顔があまりにも可愛い。
それに、志摩がこう言うんだから別にいいじゃないかとお言葉に甘えてそっと一回だけキスをした。

「んふふ、いぅき、すきぃ…いちばんすきぃ…」

素面のときはこんなふうには言ってくれないので、忘れないように言葉を噛み締める。
俺の心の中は大暴れだ。

「いぅきぃ、だいすき…」

まだ玄関だというのにそのまま眠りについてしまったらしく、寝息が聞こえだしたので、膝の上で眠る志摩を抱き上げてベットに連れて行く。
不完全燃焼の欲とひたすらにきゅるきゅるの志摩に、心臓がうるさくてどうしようもない夜だった。

「…なんだこれ」

朝の光が、カーテンの隙間から射し込む。
志摩はぼんやりと目を開けて、隣に寝ているというか俺にべったり抱きついている伊吹を見つけた。

「距離感どうした…?」

腕枕、胸の上に頬、手はしっかりと志摩の腰をホールド。
寝てるのに口角があがっている幸せそうな伊吹に反して、志摩は頭を抱えた。
昨夜の記憶が、ごっそり抜けてるのだ。

「なにか、変なこと言ったりしてないよな…?」

思い出そうとすると、なんとなく胸がざわつく。
そのとき、巻きついている伊吹の腕がさらにきつくなって志摩は思わず声を上げた。

「んー志摩起きた…?」
「お、おはよう…なんでおれここにいんの?」
「…なかったことにすんの?」
「あ?」
「昨日の志摩ちゃんはめっちゃかわいかったのに〜甘えまくって、俺のこと好きって言ってくれたのに…全部、忘れちゃったんだ」

伊吹の声がふっと落ちて、志摩はその言葉に固まった。
おれは、墓場まで持っていくべき感情を口にしたらしい。

「うそ、だよな?」
「本当。かわいすぎて、俺マジで死ぬかと思った」

恥ずかしすぎて言葉も出ない。
昨日の夜の記憶が色を増して押し寄せてくる。
あんなにまともじゃないおれを、伊吹は全部覚えている。
しかも、こうして平然と語られているという事実。

「…それで、お前よく引かずにいられたな」
「引く?志摩に?」
「そりゃそうだろ。男の!しかも相棒にそんなこと言われたら気持ち悪いだろうが。百歩譲ってお前に偏見がなかったとしても、そんなこと言われた後に同じベッドでは寝ないだろ普通」
「俺、志摩のこと好きだよ」
「は?」
「気づいてないの志摩ちゃんくらいじゃない?陣場さんも九ちゃんも、俺が志摩にビックラブなの知ってるよ?」

頭の処理が追いつかないのは朝だからだろうか。
もしかしたらまだ夢を見ているのかもしれない。

「志摩、夢じゃないよ?」
「…うるさいばか」
「えぇ〜おーぼーだ」

気にしているのは自分だけらしく、伊吹はいつもの伊吹だ。
なんか悔しくなってきた。
そもそも昨日の志摩ちゃん“は”可愛かったってなんだ。
自分でも馬鹿らしいと思うがムカついてしまう。

「伊吹」
「んー?」
「愛してる」

伊吹は細長の目をこれでもかと丸くしてから、顔を覆ってベッドの上に転がりながら悶え出す。
そんな様子におれは少し余裕が出て、笑いながら伊吹を眺めた。

「今日のおれも可愛いだろ?」
「かわいすぎてしんじゃいそう」
「それは困るから撤回しようか」
「待ってごめん!生きる!長生きするから撤回しないで!」
「ふはは、かわいいなお前」
「かわいーのは志摩ちゃんでしょ」

伊吹はぐいと腕を引き寄せ、すぽりとおれの体を自分の胸元に収めた。
こんな甘い時間くすぐったくて仕方ない。
でも、そこは思っていた以上に心地よかった。
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