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「巌戸台?」
《……うん。4月から渚と一緒に行く》
――3月。
寒い冬が終わり暖かい春の訪れを感じる、そんな季節。
とある田舎の公立中学校。その屋上に少女はいた。
「そっかぁ。いいなあ……私も二人と一緒に暮らしたいよ」
《……汐、実はその事でちょっと話があるんだけど》
「え、何?」
電話の向こうで汐と呼ばれた少女は、屋上のフェンスにもたれながら相手の返答を待つ。
屋上の下の方、グラウンドからは部活動で運動に精を出す生徒達の掛け声が聞こえてくる。
ためらっているのか、相手は少し間を置いて、次の言葉を発した。
《汐も…こっちに来ない?》
「え…」
《僕達が4月から通う学校…月光館学園って言うんだけど、そこ高等部だけじゃなくて、中等部もあるんだ》
「中等部……」
《だから、汐も月光館に》
《湊っ! はいもう次は私の番! ほら変わって変わってー!》
《ちょ、渚、》
急に違う少女の声が聞こえ、少しの話し声と雑音がした後、電話の相手がその少女に変わった。
『やっほー汐! 元気?』
「う、うん。元気だよ。お姉ちゃんは?」
『元気元気! ……あのね。今湊と話してたことなんだけど』
「……うん」
姉と呼ばれた少女の声が、ハツラツとした元気な声から、真面目なものへと変わる。
《汐、そっちの親戚の家にお世話になり始めてまだ数か月でしょ? それに、今年から受験生だし……》
「……」
《私達は汐に来てほしいけど、来るか来ないかはやっぱり汐自身が決めることだから…》
「…ふふっ。お姉ちゃん、大丈夫」
《えっ?》
少女は柔らかく微笑むと、空を仰ぎ見た。夕日で橙色に染まったちぎれ雲がふわふわと風で流れていく。
思い出すのは、かつて一緒にいた、電話の向こうにいる二人の兄と姉の顔。
「私、巌戸台に行くよ。私も、お姉ちゃんとお兄ちゃんと3人で、一緒にその町で暮らしたい」
そう話すと、電話の向こうからはやったー!等喜びの言葉が聞こえてきて、再び彼女は微笑んだ。
振り返り、屋上から見える景色。太陽が沈み、夕日に照らされている町や山。
数か月暮らして慣れてきたこの町も、嫌いじゃあない。けれど、二人の傍に今は行きたい。
いずれ兄姉と暮らすことになる遠い町に思いを馳せながら、少女…有里汐は夕日を見つめていた。
New days begins
全てが、始まる。