※P4主人公の名前は瀬多総司で固定
空腹ハニー!
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キーン コーン カーン コーン ……
「あああやっとお昼だ―っ!」
4時間目の終わりを告げる終鈴が学校に響き、ようやく一日の半分が終わったと両腕を突き上げて伸びをするといつもの友達が弁当袋を片手にこちらにやってきた。
「鈴ー!」
ハイここで私の友達のひとり、エビちゃんを紹介します。あ、エビちゃんというのはあだ名みたいなもので…本名は、海老原あいちゃん。まさに今時の女子高生って感じのおしゃれで可愛い子。ちょっとわがままだったり強気だったりするけど、根は頑張り屋さんで転校してきた私に声をかけてくれたほんとは優しい子。今ではこのクラスで一番の友達。
そんな彼女は今日も化粧ばっちりで輝いてます。うーん…ほんと、女子高生の鏡だね。
「ねえ、お昼食べようよ。もーちょーお腹すいた」
「あれ、エビちゃんダイエット中じゃなかったっけ」
「今は休憩中!」
「そうなの? はー私もお腹空いたーこの時間だけが学校で唯一楽しみで楽しみで・・・・・」
などと喋りながら昼食(いつものパン)を取り出そうと鞄に手を突っ込んだところで、頭の中にあの人…我らが特捜隊リーダー様の眉間にシワの寄った顔が浮かんできて、一瞬固まった。
「あー……」
「何、どうしたの?」
「ごめん、思い出した。私今日も約束あるんだった」
「はあ!?」
「あれ、藤田さん今日は教室で食べないの?」
ぷりぷり怒り出しそうなエビちゃんに謝り、そそくさパンを取りだし立ち上がると、隣の席の男子が声をかけてきた。
彼は一条康くん。バスケ部所属らしい。
机の上に白色の綺麗な布で包まれた弁当箱が置いてあるのを見ると、彼は今日は教室で食べるんだろう。大体いつもは授業が終わると同時に、弁当箱を持って3組…友達のサッカー部の長瀬くんの教室に行っているのだ。
「うん、ちょっと約束がね…」
「へえ、珍しいな。藤田さんっていつも教室で食べてるイメージがあるから…」
「鈴、なんか最近つれなくなーい?今日も2組達と食べるの?」
「あ、いや、みんなとじゃなくて…彼と」
「「彼!?」」
最後の一言が余計だったらしい、エビちゃんと一条くんは身を乗り出してものすごく食いついてきた。…というか、なぜ一条くんまでそんな反応しているんだ。
「藤田さん、かっ、かかか彼氏出来たの!? い、いつの間に…!!」
「彼って誰!? 2組ってことは…瀬多くん!? それとも、もしかしてあのガッカリ王子!?」
「ちょ、落ち着いて二人とも…! か、彼氏じゃないから!!」
なんとか二人を宥めて、彼…瀬多くんに呼ばれたのだと説明する。
…食生活云々は話さないでおいた。(自分でも情けないとは思う)
「呼ばれたって…それ、告白じゃないのあんた!?」
「は、はあ!?違う違う違うから!」
「こく…はく……!!」
「こらこら一条くんも信じない!」
なぜかショックを受けている一条くんと問い詰めてくるエビちゃんに弁解してから私は1組を出た。途中エビちゃんが「明日は一緒に食べるんだからねー!あと、どうなったかちゃんと教えてもらうから!」と呼びかけてきたので振り返り、苦笑交じりに手を振ってから教室を後にする。
「告白ねえ…」
実習棟への道を歩きながら、さっきエビちゃんに言われたことを思い返す。
これから行く教室で、そんな甘酸っぱい雰囲気は100%ありえない事を私は知っていた。あの瀬多くんの怒りオーラを私は忘れない…きっと、今日も昨日と同じく野菜を食べろだのなんだの説教なんだろうか…説教というか、授業だな、あれは。
渡り廊下を抜け、空き教室に着いた。…着いてしまった。
ため息を一つつき、扉に手をかけた。
「………」
てっきり昨日と同じくメガネをかけて教壇に立っているものだと思っていた瀬多くんは、窓際辺りの席に座り、窓から外の風景を見ていた。
彼からは昨日感じた怒気とか、威圧感とかは全く感じなくって。
扉の開く音に気づいてこっちを振り返った整った顔の眉間にも、皺は寄っていなかった。
「遅いぞ、藤田」
「あ…ご、ごめん」
想像と違った彼の雰囲気に思わずぽかーんとなっていると、一声かけられ我に返る。
慌てて駆け寄り彼の前の席に促されるまま座り瀬多くんと向かい合うと、机の上には紺色の布で包まれたお弁当箱が2つあった。
……2つ? 何故に2つ?
「ほら」
「へ?」
2つあるうちの1つを目の前にずいっと押し出される。
意味が分からず弁当箱と瀬多くんを交互に見やっていると、そんな私に痺れを切らせたのか彼は私に差し出した方の弁当箱の包みの結びをほどいた。
そして箱の蓋が開き、視界に入ってきた物達に思わず目を見開く。
「う…わあ!」
黄金に輝く卵焼きに、口に入れたらしっとりなめらかそうなポテトサラダ。紅一点のプチトマト。早く食べて!と今にも跳ねそうな豚の生姜焼き、など。
色とりどりの料理達が敷き詰められた四角いお弁当箱は、私の目にはキラキラ輝く宝石箱に見えました。
「ほら、食べろ」
今にもじゅるりとよだれが垂れそうになるのを抑えて、瀬多くんから箸をもらい震える手で黄金の卵焼きを取り、口に運ぶ。
ほのかに甘くて、味もしっかりついてて……おいしい。すごく。
それから私は、がっつくようにお弁当を堪能した。
そんな私を見ていた瀬多くんが視界の端でふっと笑った気がして、思わず箸を止める。
「(今のはかなり…いじきたなかったかも)」
でも、こんなまともで美味しい食事なんてすごい久しぶりだったんだ。
思わず俯いて自分を恥じていると、瀬多くんの「さっさと食べろ」とせかす声。でも怒気は含んでいなかった。
お腹も正直なようで、目の前のお弁当を欲している。
再び私が箸を動かすのを見て、瀬多くんも自分のお弁当の包みを解いた
そして十分後…
「ごちそうさまでしたーっ!!」
弁当箱はからっぽ。中身はまるっと私の胃袋の中に納められたとさ。
「瀬多くんすごいね!! 今まで食べたお弁当で一番美味しかったよーっ!」
「そうか」
空腹が満たされた満腹感から、つい顔がにこにこしてしまう。
そんな私を瀬多くんも柔らかに微笑みつつ見ている。
ふと、彼の顔をまじまじと見つめる。
どうして、彼は私にここまでしてくれるのだろう。
「どうした?」
「えと…なんでお弁当作ってくれたの?」
「お前、まともな食事を取っていなかったようだし、なら俺が作って面倒見る方が安心だろうと思って」
「面倒…見る? それってどういう…」
柔らかな微笑みを引き締め、親指をビシッと自分に向けて、瀬多くんは次にこう言ったのです…
「お前のも分これからは俺が作ってやる!」
(ええええ!?)
(これ以上ほうってはおけない)