ライラックが散るまで:1
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ごろん、と柔らかなベッドの上に身体を横たえる。お風呂にも入り、髪を乾かし、明日学校に行く準備も終えた。あとはもう寝るだけだった。行ったことがなかった新宿という都会まで足を運び、美雪と映画を見て、買い物をして一日中遊んだ。
夜9時、いつもよりも早いがベッドに入る。すると、ベッドサイドに投げていた携帯から通知音がなった。メッセージは美雪から。今日はありがとう、と彼女らしい可愛いらしく気遣いに溢れた文面に嬉しさが増す。こちらこそ誘ってくれてありがとう、と返信をしながら美雪との会話を思い出す。
映画は面白かった。買い物も楽しかった。しかし、それよりも春葉の頭の中を占めるのはあの偶然の出会いだった。
携帯電話の横に置いた持ち歩き用のメモ帳を見る。一日春葉が「話した」ことが書かれるこの中は、このまま今日の思い出だ。
「…っ」
めくってすぐにメモ帳を閉じる。
『かっこいいよね』
『結婚しているのかな』
『恋人はいるのか』
そんな文字の横に踊る、メモ書きのような単語まで「彼」についてページが埋め尽くされていた。そのページが自分の胸中をそのまま視覚化しているようで直視するのが居た堪れない。
しかし、一方でその単語達はどれも春葉にとっては大事な記号だった。僅かな邂逅。こんなにも気になって仕方ない彼のことを教えてくれる貴重な情報。
ふと思い立ったようにベッドから起き上がり、学習机の真ん中に置いた一本のペンを取り出す。
今日明智に返しそびれてしまったものだ。シルバーの細身のペン。驚くほど書き心地がよい。おそらく値段の張る良いペンなのだろう。よく見ると小さな傷が入っており、彼がこれを普段持ち歩いてるという使用感を感じて心が乱れる。
メモ帳と明智のペンを一緒に胸元に抱いた。
ーー春葉さん、よい1日を。
最後に柔く微笑んだ彼の顔と、自分の名前を呼んだ声が今も忘れられない。
耳が聞こえて、本当に良かった。
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ごろん、と柔らかなベッドの上に身体を横たえる。お風呂にも入り、髪を乾かし、明日学校に行く準備も終えた。あとはもう寝るだけだった。行ったことがなかった新宿という都会まで足を運び、美雪と映画を見て、買い物をして一日中遊んだ。
夜9時、いつもよりも早いがベッドに入る。すると、ベッドサイドに投げていた携帯から通知音がなった。メッセージは美雪から。今日はありがとう、と彼女らしい可愛いらしく気遣いに溢れた文面に嬉しさが増す。こちらこそ誘ってくれてありがとう、と返信をしながら美雪との会話を思い出す。
映画は面白かった。買い物も楽しかった。しかし、それよりも春葉の頭の中を占めるのはあの偶然の出会いだった。
携帯電話の横に置いた持ち歩き用のメモ帳を見る。一日春葉が「話した」ことが書かれるこの中は、このまま今日の思い出だ。
「…っ」
めくってすぐにメモ帳を閉じる。
『かっこいいよね』
『結婚しているのかな』
『恋人はいるのか』
そんな文字の横に踊る、メモ書きのような単語まで「彼」についてページが埋め尽くされていた。そのページが自分の胸中をそのまま視覚化しているようで直視するのが居た堪れない。
しかし、一方でその単語達はどれも春葉にとっては大事な記号だった。僅かな邂逅。こんなにも気になって仕方ない彼のことを教えてくれる貴重な情報。
ふと思い立ったようにベッドから起き上がり、学習机の真ん中に置いた一本のペンを取り出す。
今日明智に返しそびれてしまったものだ。シルバーの細身のペン。驚くほど書き心地がよい。おそらく値段の張る良いペンなのだろう。よく見ると小さな傷が入っており、彼がこれを普段持ち歩いてるという使用感を感じて心が乱れる。
メモ帳と明智のペンを一緒に胸元に抱いた。
ーー春葉さん、よい1日を。
最後に柔く微笑んだ彼の顔と、自分の名前を呼んだ声が今も忘れられない。
耳が聞こえて、本当に良かった。