ライラックが散るまで:6
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「…貴方は未熟な子どもです。今回の事件で身に沁みたでしょう」
「…」
「特に私のような職業の人間を相手にするには、気をつけなければいけないことが多い。今のままの貴方では、釣り合いが取れてるとは到底言うことができません」
はっきりと言われる言葉の数々。しかし、既に苦しいほどわかっていることだ。新たに傷つくようなことではなかった。
「今回のようなことが何度もあるようでしたら流石の私も堪りませんよ。もっと自覚をもって。自分でこの手紙に書いたように…大人になりなさい」
真剣になっていく明智の口調はこわくて辛かったが、涙を止めて向き合った。そして、きちんと受け止めたことを伝えるために、春葉は大きく一度、頷いた。
「もし、貴方が高校を卒業して、今私が言ったように大人になり、そのときも今と同じ気持ちだったのなら…」
春葉が見つめる明智の表情は変わらない。
「貴方の告白をお受けしましょう」
「…っ!?」
真剣な顔と声は、彼が決して冗談や慰みで言っているわけではないことを教えてくれる。
ただ今は明智からの言葉には嬉しさよりも、けじめをつけたい気持ちを強く動かされた。
自然と背筋が伸びるような、厳かな雰囲気。
春葉は何度も小さく首を振って頷いた。
一度止めたはずの涙が再び溢れ出す。
胸一杯に自分の口から音になることがない言葉達が、行き場のない洪水のように胸の内に溢れる。
どうしようもなく、子どもだった。
憧れと恋心で周りを見失ってしまった。そのまま命を落とす危険まであった。
そんな自分を、明智は大人へと引っ張り上げてくれた。
そして、これからもそれを待ってくれると言った。
それを思うと、今までの恋慕とは違った感情…前向きに、背筋を伸ばして胸を張って生きようと思う力が湧いてきて、目の前の人が、自分の人生にとても大切な意味をくれた特別な男性だと思えた。