ライラックが散るまで:6
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「そうだ、明智さんもさっきまでここにいたんだけど…」
「…!」
明智の名前を聞いた途端、安心感に包まれていた気持ちが一転し、春葉に緊張が奔る。よくよく思い出してみれば、この病院に来て眠ってしまうまで、そばに付いていてくれたのは明智だったことを春葉は覚えている。
あのときはホテルで起きた色々なことに追いついていくのに必死で、ゆっくり話をする時間など到底望めず、極度の疲労からそのまま眠ってしまった。
しかし、こうやって一段落した今、どんな顔をして明智に会えばいいのか全くわからなかった。
あんなに切望して会いに来た彼なのに、その自分の行動によって、彼ばかりか、目の前にいる金田一やその他のたくさん人に迷惑をかけてしまった。
何もなかったとは言え、今自分に命があることは一重に明智や金田一たちの協力のおかげだ。
何を考えても、自分の行動は愚かなことで、その未熟さを自分自身が未だに消化できていない。
「明智さん、あんな風にキツいこと言ったのも、佐倉のことを心配してたからなんだ。別に佐倉のことが嫌いだとか、そういうことじゃないからさ…そこはわかってくれよ。それに、助けてくれてありがとうってちゃんとお礼を言わないとな」
金田一の言葉に春葉は小さく頷く。すると金田一は、医者を呼んでくると言って部屋を出ていった。
1人になった病室で小さく息を吐くと、春葉の頭には昨晩経験した様々なイメージが浮かんだ。
炎と煤に覆われ、死を考えた直後に聞こえてきた明智の声。現れた彼の姿。そしてその胸に飛び込んだときに抱きしめてくれた力強さ。夢のような出来事だが、あのとき感じた熱さも、恐怖も、そして安堵の気持ちも、全て本物だった。
燃え広がる火の中まで春葉のことを探し、命を助けてくれた彼を、避け続けることなどできるはずがない。
それなのに今、改めて明智に会うことをただ恐いと思っていた。また、ホテルで会ったときのように…今度はそれ以上に叱責されてしまうかもしれない。
審判を待つかのような緊張の中、病室の扉がノックされて、春葉の身体が跳ねた。