…あたたかい。
心地よい重みに安心する。

「…」

ゆっくりと春葉が目を開けると、見慣れない真っ白な天井が見えた。薄いカーテンから光が漏れ出しており、寝起きのまぶたを刺激する。
しかし、目は開いても身体は鉛のように重たく、起き上がるにはもう少し力が必要だ。

「佐倉…！起きたのか！」

声のするほうへゆっくりと顔を動かすと、そこには見知った顔の同級生…金田一の姿があった。しかし、普段彼と会う教室では見たことがない、今にも泣きだしそうな顔をしていた。

いつもは彼の幼なじみに向けられている優しげな顔も、男性が泣きそうになっているのも、自分に向けられるのは生まれて初めてで、まだ靄のかかる頭を起こすのには、十分な刺激となる光景だった。

「よかった～！」

金田一が春葉に飛びついてくる。ずしり、と彼の重みを感じる。普段の春葉と金田一の関係では抱き合うだなんて到底考えられないことだったが、今は驚きよりも、その柔らかい人の温かさに触れたことによる嬉しさでいっぱいだった。
昨晩の出来事が、つい数分前のことのように思い出せるくらいで、今自分が安全なところで無事に目を覚まして同級生と再会できたことに、目頭が熱くなった。

「お医者さんの話だと、特に怪我もないみたいだってさ！」

無事でよかった、どれだけ心配したか、生きた心地がしなかった。と、金田一は春葉に向かって一心に語り続ける。昨晩から春葉が目を覚ます今まで、彼がどれだけ気を擦り減らしたのかを慮ると、申し訳なさで心がいっぱいだった。

「ごめんね」と唇が動いたが、それが全く音にならなかったことが悲しい。

「めちゃくちゃ心配したけど…とにかく佐倉が無事で本当に良かった」

声を出して謝ることはできなかったが、金田一は春葉の気持ちを十分に汲み取ってくれた。彼は春葉から離れて、少し照れくさそうに笑うと、滲んでいた涙を拭った。