ライラックが散るまで:5
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「明智さん!!」
「明智警視!!」
「金田一君、剣持警部…」
気が抜けたのか、泣き疲れたのか、眠ってしまった春葉を抱えて、明智がホテルに戻ると館内は騒然としていた。館内での殺人事件、そして大規模な山火事。
消火活動と安全確認に人々が奔走していた。外から戻ってきたボロボロの明智の姿を確認すると、金田一と剣持がすぐさま駆け寄ってくる。
「佐倉…!よかった、無事で…」
金田一はうっすら涙を滲ませながら、春葉の顔を覗き込んでいる。眠っている彼女を見て、心底安心したようだった。
明智のジャケットを掛けられている為、春葉の衣服の乱れを悟られることはなかった。
事実確認はできていないが、友人関係、ましてや異性である金田一に何かを感づかれるのはお互いにとっていいことはないだろう。
「事件は…?」
「火事で館内がパニックになる前になんとか。解決しなかったら、この騒ぎに乗じて証拠隠滅されてたかもな。間一髪だった。」
「それで、高遠は?」
「それが、途中で死神マジシャンの妨害に合って…2人揃って逃げられました…」
申し訳ございません、と剣持が悔しさを滲ませて謝る。しかしそれを明智も責めることはなかった。
最小限とは言えない被害。霧島を取り逃したこと。多大な反省の残る現場だった。
それでも、今明智の腕の中にいる少女の命を守ることができたことに安心した。
「剣持警部。消火活動と、事件の後処理は任せても大丈夫ですか?」
「はい!」
「お願いします。私は今から春葉さんを病院まで連れて行きますので」
「明智さんこそ大丈夫なのか?さすがに疲れているんじゃ…」
「…これぐらいなんともないですよ。少し休めば問題ありません」
「…ありがとうな。俺も明日、そっちにいくから」
金田一も春葉にかけたい言葉がたくさんあるのだろう。名残惜しそうな眼で春葉を見ている。
自分以外の人間に心を砕ける優しい少年の姿を見て、これ以上彼に悲しいことを悟らせたくないと明智は人知れず苦い顔した。