ライラックが散るまで:5
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「春葉さん!」
明智は力の限り叫んで、春葉を探した。
無意味かもしれなかったが、明智は必死に春葉の名前を呼んで、建物を確認していった。
火の回りがどんどん早くなる。建物の窓ガラスは割れ始めている。一番火の回りが早かった小さな小屋を見に行ったが、そこには春葉はいなかった。今は既に近寄ることすらできないほど、燃え上がってしまった。
一度中を確認したとはいえ、焦りで彼女を見落としていたらと思うと正気を保つのは困難なほど焦燥感に襲われる。
「春葉さん!」
何度も「手遅れかもしれない」という弱い心が覗く中、最後まで諦めることはできなかった。
すると、明智の耳に微かな異音が耳に響いた。
「まさか…」
それは少し離れた箇所にある小屋だった。ドアが僅かに振動し、動いているのがわかった。急いでそこに向かって走り、ドアの前までくる。
「春葉さん!ここですか!?」
声をかけると、一瞬ドアが振動をやめた。一瞬見間違えかと思い肝が冷えたが、再びドアが内側から激しく叩かれたのを見て明智の胸に光が差すようだった。
ここにいる、と一生懸命彼女が主張しているのがわかる。
「ドアから離れてください!」
そう声をかけ、一呼吸置いてから明智は持っていた拳銃で鍵の部分を壊した。そのままドアを蹴破ると、そこには煤焼けながら涙をこぼす少女の姿があった。
「…っ」
気がつけば腕を引いて、細くて小さな身体を力一杯抱きしめていた。腕の中で春葉が震えるのを感じると、彼女が生きていることを確認できた安心感と、こうなってしまったことへの申し訳なさでいっぱいだった。
「逃げますよ!」
春葉を抱き抱えると、彼女の衣服がはだけていることに気づいた。霧島が明智に見せた春葉の衣服は本物だったのだとわかると、唇を噛んだ。
とにかく今は、と春葉を急いで安全な場所まで連れて行くと、震えと涙が止まらない春葉に、少し焼けてしまった自分のジャケットをかけて、落ち着くまで背中を撫で続けた。