ライラックが散るまで:5
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高遠が出て行ったドアを暫く見つめ、春葉はようやく落ち着きを取り戻した。
(このロープさえ外せれば…)
どこかでは無駄だと思っていても、春葉はがむしゃらに手首を動かしてみる。
(あ、れ…?外れた?)
はらり、とロープが切れて身体が楽になる。起きたときから何度か試したが、そのときはロープはびくとも動かなかった。不思議に思い、その断面を見ると何かで切ったかのような切れ込みが見えた。
切り口から霧島の持っていたナイフを想像したが、すぐさまその可能性を打ち消す。あの男がそんなことをするはずがなかった。次に浮かんだのは高遠だった。いつどんな風にかはわからなかったが、この状況でこんなことができるのは彼しか考えられない。
何故高遠が春葉を2度も助けのか。理由はわからなかったが、今はそんなことを考えている場合ではない。自由になった手で足の拘束を解くと、春葉はドアに駆け寄ってドアノブを捻った。
ードォンッ
「!」
突然の爆音に春葉の身体が跳ねる。鳴り響いた音に驚き、辺りを見渡すと、カーテンの奥の外が真っ赤に光っているのが見えた。ばちばちと鳴り響く音。スンっ鼻を鳴らすと、焦げ臭さを感じた。まさか、と見ている光景を疑うが、徐々に温度を増していく周囲の空気ですぐさま確信へと変わる。
小屋が燃えている。
「…っ!?」
再度ドアノブを捻るが、外側から鍵がかけられているのか開く気配は無い。焦りを加速させるように、バリンっと窓ガラスが熱で割れた。すぐに室内に煙が充満し、視界を覆っていく。
(助けて…!)
そんな言葉が身体中を駆け巡るのに、喉の奥からは何もでてこない。せっかくロープが解けたというのに、このままでは何の意味もない。焦りから、不用意に煙を大きく吸い込んでしまった。咳き込んでいると、悔しさと恐怖に気力を奪われ、そのままドアの前に座り込んでしまった。
(明智さん…)
死を目前にして春葉は色々な「後悔」に襲われた。せめて言葉はなくとも、彼に直接謝りたかった。
それから、家族のことを考えた。
諦めた瞳からはぼろぼろと涙が溢れ始めた。
「ーー春葉さん!」
「!」
「春葉さん!どこですか!?」
はっと意識が戻る。
忘れもしない声。
遠くなったり、近くなったり、彼の切羽詰まった様子が伝わってくる。死の間際の幻聴かと思ったが、時折鮮明に聞こえるその声に身体が反応した。
ここにいる!と叫んで応えたいが、それは言葉となって出てこない。それでも自分がいることを明智に知らせたかった。
春葉は身体を起こして、炎で熱くなったドアを手が焼けるのも構わず懸命に叩いた。
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