ライラックが散るまで:3
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「はぁ…」
明智は春葉の宿泊部屋の前で重たいため息を吐いた。あの少女の明智への感情に気づいていないわけではなかった。しかし、明智はその気持ちに応えることはできないし、そのつもりもなかった。あの年頃の女性によくある年上に憧れる気持ちで、きっと時が立てば冷静になって明智のことなど忘れるだろうと軽く考えていたのだ。
それか、こうやってまた再会してしまった。彼女からはっきりと聞いたわけではないが、彼女は明智を追いかけてきたのだろう。見かけによらず大胆な行動をとったものだと感心してしまうほどだった。しかし、少女の可愛い恋心故の行動で済む話と済まない話がある。春葉に言った言葉を撤回するつもりはなく、大人として、警察官として当然のことを言ったまでだ。
そうは思いつつも、柄にもなく感情のままに叱責してしまったことを少し後悔していた。普段であればこんなことは何とも思わない冷たい人間だと思っていたのだが、何故だか無性に罪悪感に駆られて仕方ない。
「…金田一君の言う通り、あそこまで言うことはなかったかもしれませんね…」
とはいえ、彼女には帰って貰わないと困る。まずはキツく言いすぎたことを謝罪してから諭せば彼女もわかってくれるはずだ。覚悟を決めてドアをノックする。
「いないのか…?」
ノックをしてから暫く待っても、何の応答もない。どこか外へ行ってしまったのだろうかと少し考えたが、どこか胸騒ぎを覚え、今すぐに部屋の状況を確かめなければという焦燥感に駆られ始める。明智が春葉を帰したかった理由…美雪を連れてきて欲しくなかった「原因」が頭を過ぎった。
すっかり春葉の登場に驚いて意識が薄れていたが、ここに着いた瞬間から「あの男」を警戒しなければならなかったのだ。
「まさか…」
ドアノブを回しても、オートロックの部屋は当然のことながら外側からは開けられない。嫌な予感が全身を駆け巡り、気がつくとホテルの廊下を走ってフロントへと戻っていた。
「部屋のマスターキーを貸してください!」
「さ、さっきの警察の方…い、一体何故…」
「理由はあとで説明します!すぐに鍵を渡してください!」
「は、はい!」
半ばひったくるように鍵を受け取ると明智はそのまま春葉の部屋へと戻る。ドアを開ける前に拳銃に手を伸ばす。
「あ、明智さん!?どうしたんだよ!」
フロントで明智を見ていたであろう金田一と剣持が後ろをついてくる。それには返事をせずに、明智は息を殺して勢いよくドアを開けた。
「っ!」
拳銃を構えて中を覗く。シンプルな1人部屋はすぐに中が見渡せる。電気はついているが、そこには誰もいない。
「春葉さん!」
声を出して名前を呼ぶ。しかし中は隠れるような場所がない部屋だ。念の為ユニットバスやクローゼットの扉を開けるが、やはり人影を見つけることはできなかった。
「くそっ…」
ふと目に止まったのは簡易テーブルの上。見覚えのあるメモ帳の横には1枚のカードが置いてあった。それを手に取った瞬間、嫌な予感が確信に変わり明智は心臓が潰されるような痛みを覚えた。
ぐしゃり、と手のひらでそのカードを握り潰す。
そこには死神マジシャンの痕跡が残されていた。
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「はぁ…」
明智は春葉の宿泊部屋の前で重たいため息を吐いた。あの少女の明智への感情に気づいていないわけではなかった。しかし、明智はその気持ちに応えることはできないし、そのつもりもなかった。あの年頃の女性によくある年上に憧れる気持ちで、きっと時が立てば冷静になって明智のことなど忘れるだろうと軽く考えていたのだ。
それか、こうやってまた再会してしまった。彼女からはっきりと聞いたわけではないが、彼女は明智を追いかけてきたのだろう。見かけによらず大胆な行動をとったものだと感心してしまうほどだった。しかし、少女の可愛い恋心故の行動で済む話と済まない話がある。春葉に言った言葉を撤回するつもりはなく、大人として、警察官として当然のことを言ったまでだ。
そうは思いつつも、柄にもなく感情のままに叱責してしまったことを少し後悔していた。普段であればこんなことは何とも思わない冷たい人間だと思っていたのだが、何故だか無性に罪悪感に駆られて仕方ない。
「…金田一君の言う通り、あそこまで言うことはなかったかもしれませんね…」
とはいえ、彼女には帰って貰わないと困る。まずはキツく言いすぎたことを謝罪してから諭せば彼女もわかってくれるはずだ。覚悟を決めてドアをノックする。
「いないのか…?」
ノックをしてから暫く待っても、何の応答もない。どこか外へ行ってしまったのだろうかと少し考えたが、どこか胸騒ぎを覚え、今すぐに部屋の状況を確かめなければという焦燥感に駆られ始める。明智が春葉を帰したかった理由…美雪を連れてきて欲しくなかった「原因」が頭を過ぎった。
すっかり春葉の登場に驚いて意識が薄れていたが、ここに着いた瞬間から「あの男」を警戒しなければならなかったのだ。
「まさか…」
ドアノブを回しても、オートロックの部屋は当然のことながら外側からは開けられない。嫌な予感が全身を駆け巡り、気がつくとホテルの廊下を走ってフロントへと戻っていた。
「部屋のマスターキーを貸してください!」
「さ、さっきの警察の方…い、一体何故…」
「理由はあとで説明します!すぐに鍵を渡してください!」
「は、はい!」
半ばひったくるように鍵を受け取ると明智はそのまま春葉の部屋へと戻る。ドアを開ける前に拳銃に手を伸ばす。
「あ、明智さん!?どうしたんだよ!」
フロントで明智を見ていたであろう金田一と剣持が後ろをついてくる。それには返事をせずに、明智は息を殺して勢いよくドアを開けた。
「っ!」
拳銃を構えて中を覗く。シンプルな1人部屋はすぐに中が見渡せる。電気はついているが、そこには誰もいない。
「春葉さん!」
声を出して名前を呼ぶ。しかし中は隠れるような場所がない部屋だ。念の為ユニットバスやクローゼットの扉を開けるが、やはり人影を見つけることはできなかった。
「くそっ…」
ふと目に止まったのは簡易テーブルの上。見覚えのあるメモ帳の横には1枚のカードが置いてあった。それを手に取った瞬間、嫌な予感が確信に変わり明智は心臓が潰されるような痛みを覚えた。
ぐしゃり、と手のひらでそのカードを握り潰す。
そこには死神マジシャンの痕跡が残されていた。