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春葉はベッドの上で泣いていた。先ほど明智に言われた言葉や彼の表情が頭から離れない。浅はかな人間だと幻滅されてしまっただろうか。明智のように、賢く理性的な人は今日の春葉のような軽率な行動には厳しいだろう。彼に会いたいという一心で周りが見られなくなり、軽率にとってしまった行動に深く後悔の念に襲われていた。

もう、終わりだ。
取り繕う言葉も咄嗟に紡ぐことができない自分。元々春葉と明智の間の縁はいつ消えてもおかしくないような薄いものだった。それがほんの少し、奇跡的な偶然で繋いでもらっただけだ。それだけで満足するべきだったのに、こんな形で終止符を打つことになってしまったこと、自分の恥ずかしい行動に考えれば考えるほど涙が出てくる。
何故思い留まることができなかったのだろう。明智のように大人の判断ができない、子どもの自分が恨めしい。

ひとつ、今強く思うのは明智に謝りたいということだった。あのような場面で咄嗟に言葉を出すことは春葉にはできないが、彼にこのことを謝罪せずこのまま終わるだなんて耐えられなかった。
きっと明智はこのあと春葉を迎えにくる。それまでになんとか言葉を形にしたく、未だに止まらない涙を指で何度も拭いながら、メモ帳に文字を綴る。

しかし霧散した言葉しか出てこない。ごめんなさい、という単語はいくらでも出てくるのだが、溢れてくる思いを伝えてくれる文章にはならず、ただの文字の羅列が白紙の上に踊るだけであった。
失敗した紙を何枚も引き千切り、ゴミ箱に捨て続ける。紙面上でうまく表現できない言葉が虚しく、悲しみを煽って余計に涙が止まらなかった。気がつくと驚くことにメモ帳の紙が最後の一枚だけとなっていた。

「っ…」

その最後の一枚を見たとき、「もう次はない」という今の自分自身の状態を表しているようで無性に辛くなった。

しかし、そう思った瞬間「最後ならば彼にこれを伝えたい」と一つの文章が胸の奥からこみ上げてきた。

丁寧にそれを書き綴ってそのメモ帳を閉じると、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻すことが出来た。