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ライラックが散るまで:2

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※短編「死神救世主」使用。結婚相手の苗字。

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「なぁなぁ、あの2人大丈夫かなぁ。」

流石に無理があったか、と1人反省する金田一に美雪が軽く笑った。

「ほら見てみて。案外楽しそうよ。」
「ほぉ~…」

自分の背中側にある明智と春葉のテーブルを金田一が少し首を振り返って見る。明智の声しか聞こえないが、垣間見えた春葉は明智に会ったときには考えられないほど朗らかな笑顔を見せていた。彼女の手元にはいつも持ち歩いているペンとメモ帳が置いてあり、明智が言ったことに対してそれで返答していることもある。金田一がよく教室で見ている、春葉と美雪のやり取りとそっくりだった。

「なんかこうして声だけ聴いてると明智さんが1人で必死にしゃべってるみてーでおもしれーなぁ。」
「ふふっ。確かにね。明智さんも少し気を使ってたくさん話をしてるんだと思うけど…結構息が合ってるんじゃないかしら?」
「まぁ佐倉くん…あの子も中々わかりやすいからなぁ…。常々かみさんに鈍いって言われてる俺でも気づくぐらいだからなぁ。」
「ま、今後は佐倉次第だな。」
「そうね…。」

ごちそうさま、と金田一が言うと美雪が立ち上がる。

「じゃあこの後みんなで話があるんでしょう?私と春葉ちゃん、先に帰るわね。」
「お~わかった!」
「代金は気にしなくていいからな。気をつけて帰るんだぞ。」

そう言うと美雪は春葉と明智の座るテーブルに行くと、食事の終わった春葉に声をかける。
楽しい時間を過ごしたであろう春葉には、多少名残惜しくても別れを悲しむような悲壮な表情はなく、明智へのお礼を笑顔で伝えた。春葉と美雪が2人出て行ったのを見届けると、明智が金田一と剣持の座るテーブルへ移動した。

「ヒュ~!流石女性の扱いが上手なこって。」
「どうも。」
「くそ~やっぱりなんか嫌味っぽい…。でも流石だな、俺だって佐倉相手にあんな風にはいかないのになぁ。」
「最初は春葉さんも緊張していたようですが、存外話好きのようですよ?」
「なっ…明智さん、春葉だなんてちゃっかり下の名前を…」
「下の名前しか知りませんでしたので。訂正するのも却って不自然かと思いますし。」
「っかぁ~!クールでいけすかねぇ~!女子高生手玉にとって楽しいかねぇ。」
「…向けられる好意は嫌な気分ではありませんが…あの年代にありがちな年上に憧れる気持ちと同じでしょう。すぐに冷めますよ…。」
「…大人だねぇ…。」

明智も春葉の好意に気づいていないわけではなかった。
しかし彼ももうそんなことに何かを揺さぶられるようなことはないのを感じとった金田一は、複雑な心境で口を閉じることしかできなかった。
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