「貴方は面白い方ですね。言葉を発さないのに、表情と雰囲気で会話ができているように感じてしまう。」
「…。」
「職業柄色んな人間と会いますが、私が知る限り貴方は随分とおしゃべりだと思いますよ。」
「…？」
「何もコミュニケーションは口から発せられる言葉が全てはありませんよ。貴方を見ていると特にそう思う。口がきけても話すことが苦手な人、無反応、寡黙…そんな人間たくさんいます。そういう人に比べたら、貴方のような方のほうが一緒にいてよっぽど楽しめますよ。」

そう言って明智は笑顔を見せてくれた。
言われたことをひとつひとつ飲み込んで行くのに時間がかかりそうだ。身体の奥から音が聞こえてくる。明智が今言ってくれた言葉がどれほど春葉にとって嬉しいことだったのか、目の前の男性はわかっていっているのだろうか。それとも場を持つため、気を良くさせるためのお世辞なのだろうか。考えだすと止まらないが事実は「嬉しい」というひとつだった。

美雪や他のクラスメイトは春葉のことを「わかりやすい」などと表現をするが、きちんと説明をしてもらったのは初めてだった。その上で、目の前の男性は「一緒にいて楽しめる」と言ってくれたのだ。

「ふふ…」
「…！」
「さっきから色んな顔をしていますよ。まぁ…喜んで頂けたのは伝わります。折角なので一緒におしゃべりでも楽しみましょうか？」

さぁ、何が好きですか？とメニューを差し出す明智に、ようやく自然な笑顔を向けられた。